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柔軟性とは

柔軟性とはスポーツを行う際だけではなく、座りがちな生活を送っている人にとっても必要なものです。

つまりすべての人にとって必要だということが言えます。

どれほどの柔軟性が必要かということは競技を行っているか、行っていないか、その他目的によって左右されますが基本的には人々が最低限の柔軟性を持っていると言えます。それは日常生活の活動においてすべったり、転んだりしないように十分に対応できる能力を持っているからです。

日常生活において体を動かす、その行為自体に柔軟性を必要とされます。もし筋肉、関節、腱、皮膚、靭帯これらのそれぞれが相互的に働いていないと日常の生活はかなり制限されます。普通に歩くことすらもままならなくなるでしょう。

柔軟性という言葉自体は関節の可動域という意味で、それに柔軟性に関与している筋肉や靭帯、腱や軟部組織のことを指します。looseほぐれた、suppleしなやかな、stretched柔軟な、extended伸ばされた,elongated引き伸ばされた、伸長した、という言葉は軟部組織を説明するために使用される言葉です。

柔軟性は行える最大の可動域の中で関節を縮めたり、伸ばしたり、弧を描いたりできる能力の事を指します。

木を見ず、森を見よ

柔軟性についての重要性を説いたばかりですが、多くのフィットネス愛好者はストレッチされたポジションにおいて筋力の機能の発達を無視してただただ柔軟性のトレーニングについて強調しすぎている部分があるのかもしれません。関節の可動域を改善させることができても、新たに得た可動域の範囲での筋力が改善されなければ、せっかく新しく得られた可動域は怪我への招いてしまう危険性が高まります。

たとえば関節の柔軟性が今までより5度向上させることができたとしましょう。そうするとアクチンとミオシフィラメントの重複が低下し、その結果筋出力の機能が低下します。ですから筋力トレーニングと柔軟性のトレーニングは行うタイミングを考慮して双方の効果が十分に得られるようにバランスやタイミングを考慮して行う必要があります。

人が運動する際、柔軟性、筋力、持久力、スピードなど(フィットネスを構成する要素参照)が動きを向上させる因子として必要とされます。これらの能力は概念上は区画化されていますが、私たちの動きというものはさまざまな角度、状態によってそれぞれの能力が同時に発揮されます。したがってどれかひとつだけ鍛えておけば良いということはない、他のそれぞれの要素を伸ばすことによって柔軟性の持つ意義が活きてくるということです。


解剖学、生理学から見るストレッチング

柔軟性を理解するには解剖学、生理学も知っておく必要があります。とりわけ重要であるのが筋繊維の基本単位であるサルコメア、柔軟性を抑制する主要な要素である固有受容体のゴルジ腱組織(GTO)、筋紡錘、パチーニ小体です。

サルコメア(筋節):

サルコメアはZ膜(Z線)と呼ばれる隔膜によって隣接するサルコメアと連結しています。

サルコメアの中央部は密度が高くA帯と呼ばれ、その両側には密度に低いI帯が存在します。

両方のZ膜から強固に連結され中央に向かっている細いフィラメント(図:緑色の部分)がアクチンフィラメント、またサルコメアの中央部に位置し、アクチンフィラメントと左右均等に重なって位置しているのがミオシンフィラメント(図:紫の部分)です。

このミオシンフィラメントのミオシン分子の一部が突出し(頭部と呼ばれる)がアクチン分子と結合したり、解離したりします。ミオシン頭部とアクチン分子の間で形成される構造体をクロスブリッジと呼び、これが筋収縮という力の発生の最小単位です。



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Z膜とZ膜の間隔のことを筋節長といいます。

・Z膜とZ膜との間隔が短くなり収縮している状態=短縮性収縮
・外から加わる力と筋細胞が出す力とのバランスによりZ膜とZ膜との間隔が短くならない場合=等尺性収縮
・逆にZ膜とZ膜との間隔が伸ばされる状態=伸長性収縮

筋節長がいかなる場合においてもミオシンフィラメントはその長さを変えません。これはコネクチン(タイチン)と呼ばれる弾性たんぱく質によるものです。コネクチンは左右のZ膜からミオシンフィラメントと結合しA帯の中央部(M線)にまで達しています。(一方でアクチンフィラメントはαアクチニンというたんぱく質によってZ膜に連結されています)

コネクチンの弾性作用によってミオシンフィラメントはその長さを変えることなく、サルコメアの構造を維持することができます。

しかしながらストレッチさせ続けたり、強い刺激を与え続けるとたとえ弾性作用があるとはいえ、コネクチン分子が破壊されてしまいます。コネクチン分子が破壊されるとミオシンフィラメントとアクチンフィラメントの左右不均一化が起こり(筋節長の弾性がなくなり)筋繊維の収縮、伸長能力の低下、そして最終的には怪我を引き起こす原因となります。

破壊するまで強い刺激を与えてはいけませんが、適度に筋を伸ばすことで筋肉にとってよい結果をもたらすことが明らかになっています。

ロンドン大学のパメラ・ウィリアムス、ジョフリー・ゴールドスピンク博士らが行った研究では長期にわたって筋肉が伸ばされるとミオシンとアクチンの重複が低下し、その結果筋フィラメントの終端において新しいサルコメアが合成され、それぞれのサルコメア内にアクチンフィラメントとミオシンフィラメントが構築されるとのことです。

これぞストレッチを行う意義といっても良いですね。


固有受容体:

固有受容体とは神経筋システムであり、筋繊維の損傷に対してセーフガード的な役割を担っています。

どういうことかと言いますと、筋に急激な負荷がかかった場合に筋肉が働くために必要な神経インパルス(電気信号)を送るのを抑制し、筋肉にそれ以上負担がかからないように抑制するシステムのことを指します。

この固有受容体の機能を果たす3つの主要な器官があります。それがゴルジ腱組織(GTO)、パチーニ小体、そして筋紡錘です。日常生活でいちいち筋肉が動くのに固有受容体が反応していたらまともに生活が送れません。あくまでも緊急用、身を守るための自動車のエアバックみたいなものだと考えてください。



ゴルジ腱組織(GTO):

ゴルジ腱組織は筋関節の結合部に位置しており、大きな機械的ストレスに感知します。大きな負荷がかかるとGTOは脳の運動皮質に筋収縮をやめるように働きかけます。GTOはそれほど繊細な器官ではなく、日常生活で与えられる程度の刺激では反応せず、強い刺激が加えられたときに限って反応します。


パチーニ小体

パチーニ小体は、小さく、楕円形状の構造をしており、皮膚の真皮の深層、GTOの近くに存在します。パチーニ小体は鋭い動作や大きな圧力に対して反応します。しかしながらGTOや筋紡錘と比較して、抑制をする作用については詳しくわかっていないようです。


筋紡錘

筋肉がストレッチされすぎたときに感知する感覚器です。

筋紡錘はGTOとは異なり、環状フィードバック機能(運動皮質に送る電気信号を抑制しそれによって筋収縮を抑制する一連の制御反応)を抑制しません。つまり、筋紡錘は運動皮質を通してシグナルを中継せず、それ自体が抑制器官として働きます。

筋紡錘をリセットするためにPNFやCR法などのストレッチ方法があります。


関節の可動域を向上させるには:

ストレッチの方法としては短時間で強い強度で行うストレッチ(固有受容体を誘発させやすいストレッチ)よりも時間をとって中強度で行うストレッチや筋紡錘の働きを抑制するPNFやCA、CR法などのストレッチ法が好ましいでしょう。

ストレッチ後に痛みを感じる場合はヒドロキシプロリン(結合組織中に見られるアミノ酸)、その他の化学物質が微小な損傷を受けた組織の修復を助けるために放出されます。ストレッチ後に痛みを感じるということはハードにストレッチを行いすぎているということです(ストレッチを行うに当たって、ストレッチの種類の項参照ですが、目的によってはあえてこのようなストレッチを行う場合もあります)。

 
 
 
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