フィットネスとは何を意味するのであろうか。
フィットネスの構成要素はその人の生活様式や体質、運動歴、競技を行っている人なら行っている競技、またそれに伴う目的によって異なる。マラソン選手と投擲選手のトレーニング内容が異なる、趣味でジョギングを行う人と競技で優勝することを目的としているマラソン選手のトレーニング内容が異なるといったように、フィットネスの定義は個々の目的、ライフスタイルにあわせて構成される。以下にフィットネスを構成する要素を16挙げてみたので、自分にとって何が必要かチェックしてみてほしい。
- 1.リミットストレングス(極限強度)
- 骨格筋が一度に発揮しうる最大パワーのことで体作りを行う際の基礎となる要素である。リミットストレングスを用いる競技の代表例としてはパワーリフティングやウエイトリフティングなどが挙げられる。
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- エキセントリックストレングス(伸張性筋力):コントロールさせながら筋肉を伸長させていくときに必要な筋力の事をいう。バーベルカールでバーベルを下ろしていく動作がこれにあたる。
- スタティックストレングス(等尺性筋力):筋肉が長さを変えないままで発揮できる筋力のことをいう。バーベルカールで肘が垂直になった状態で静止している状態がこれにあたる。
- コンセントリックストレングス(短縮性筋力):筋肉を短縮させていくときに必要な筋力のことをいう。バーベルカールでバーベルを上げていく動作がこれにあたる。
- 2.スターティングストレングス
- 瞬間的にどれだけ多くの筋繊維を働かせることが出来るかを表す。スポーツで例えるなら、野球で速い球を投げる、ボクシングですばやいパンチを打つ時などに必要とされる。スターティングストレングスを向上させるためには55〜75%程度の強度のウエイトトレーニングと軽い重量を用いて行うプライオメトリクスなどのコンビネーショントレーニングが最適だとされている。
- 3.エクスプローシブストレングス(瞬発力)
- パワーとスピードの積。つまり発揮した最大筋力をどれだけ持続できるかのことを表す。エクスプローシブ・ストレングスを向上させるためには70〜80%程度の強度のウエイトトレーニングと軽い重量を用いて行うプライオメトリクスなどのコンビネーショントレーニングが最適だとされている。
- 4.アジリティ(敏捷性)
- アジリティとはリミットストレングス、スターティングストレングス、エクスプローシブストレングス、そして動的バランスを統合させた能力のことでジグザグダッシュなど瞬時の動き、動作の切り替えに必要とされる能力である。
- 5.フレキシビリティ(柔軟性)
- リミットストレングスを減少させることなく関節を曲げたり、伸ばしたり、または回したりする能力。ストレッチにおいては関節可動域の柔軟性も大事だが、筋力を低下させない範囲で保てる筋肉の可動域の広さが重要である。
- ストレッチの種類:
- PNFや軽い負荷を与えて行うレジスタンス・ストレッチングなどのストレッチ法はストレッチポジションでの筋力を向上させるとされている。スタティックストレッチやダイナミックストレッチも行う目的を考慮したうえでトレーニングプログラムに組み込んでいくとウォームアップ、疲労回復に効果的である。
- 6.静的バランス
- 静的な動作の中でいかに重心をコントロールできるか。片足閉眼立ちなどがそれに当たる。この能力を向上させるには短時間の練習で良いので高い頻度で繰り返すことが重要である。
- 7.動的バランス
- 動的な動作の中でいかに重心をコントロールし維持できるか。ジグザグランニングや宙返りなど動作を行っているときに必要とされるバランス能力である。静的バランス同様、この能力を向上させるには短時間の練習で良いので高い頻度で繰り返すことが重要である。
- 8.持久的筋力
- リミットストレングスの能力をどれだけ維持できるか。4クォーターに分けて行うアメリカンフットボールの試合や一日に合計9〜本以上試技を行うパワーリフティングの試合などにおいて最大筋力をどれだけ維持することが出来るかの能力をいう。
- 9.筋持久力
- 何ラウンドにもわたるボクシングのやレスリングのスパーリング、腕立て伏せをずっと続けて行うなど長時間にわたって運動を持続するための能力を指す。この能力を向上させるには特殊なフォームで行うウエイトトレーニング、軽重量で行うウエイトトレーニングなどが効果的である。
- 10.スピード持久力
- スターティングストレングスで発揮される最大スピードをどれだけ維持できるか。陸上の100メートル、200メートル、400メートルなどがこれにあたる。
- 11.心肺持久力
- どれだけ効率よく酸素を取り入れ、老廃物を除去できるかの能力。心肺持久力を評価する要素としては
- 心拍数:一分間にどれだけ心臓が血液を送り出せるか
- 一回拍出量:一回の心臓のポンプ作用でどれだけ血液を送り出せるか
- 左心室の駆出分画:一回の拍出で左心室から送り出せる血液の割合
- 最大酸素摂取量:運動中にどれだけ酸素を取り込むことが出来るか
- 肺の換気容量:遺伝的なガス交換機能の効率性
- などがあげられる。
- 12.マッスルマス(筋肉量)
- 除脂肪体重のうち骨格筋の占める割合。ボディビルダーにとってはこれが競技のポイントにもなるので重要であるが、一般的なアスリートにとっては体重あたりの筋力の比率のほうが重要視されるだろう。
- 13.体脂肪
- 全体重のうち脂肪が占める割合。競技によって異なるが一般的なアスリートの体脂肪は男性で5〜13%、女性で12〜22%が”良い”とされている。また男性では25%、女性では32%が肥満と定義されている。
- 14.ストレス
- 生活の質を向上させるためにどれだけストレスをコントロールできるか。普段の生活において無駄なストレス因子をすべて排除することが出来れば理想なのですがいつもそううまく行くとも限らない。エクササイズはもちろん、心理学的アプローチ、またメディカルサポートを受けることもストレス・コントローリング技術として勧められる。
- 15.病気や怪我
- 都市部などで多い車の排気ガスによる大気汚染の中での生活、乱れた食習慣、運動不足、またこれらの合併症・・・これらは病気や怪我の原因、もしくはそれらを悪化させる原因となる。英単語の病気”disease"ということばを分解してみると”dis-ease"(安心できない)という意味になる。健康的な生活を送るために"at ease"(安心できる)状態を保ちたいものである。
- 16.生活スタイル
- シワや閉経後の女性に多いといわれる骨粗鬆症、関節炎やアテローム性動脈硬化、皮膚病などこれらすべては早期老化の一つのサインである。しかし、これらのほとんどはバランスのとれた食生活、サプリメンテーション、そしてエクササイズを行うなど、生活習慣の改善によって予防することが可能だと考えられている。
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