ビタミン
ビタミンは植物や動物の細胞に含まれる微栄養素で、体が正常に代謝のプロセスを行うために必要不可欠な物質です。とりわけ運動を行っている、活動量が多い人は少ない人に比べてその必要量は増大します。ビタミンにはそれぞれの役割があり、バランスよく摂取することが体の機能を最大限に働かせるためのポイントです。
各種ビタミンの働き
ビタミンA(レチノール): ビタミンAは皮膚や粘膜、夜間の視力などの機能の維持に貢献する。脂溶性ビタミンであるビタミンAは過剰摂取すると有毒となるといわれている。ビタミンAはにんじんや黄色野菜などに含まれる。
ビタミンB1(チアミン、サイアミン、抗神経炎の意味でアノイリンとも呼ばれる):ビタミンB1は神経細胞の働きの維持、糖質の代謝に深く関わっている。ビタミンB1が欠乏すると、疲れやすくなったり、脚気、ウェルニッケ脳症(眼球運動麻痺、歩行運動失調、意識障害を伴う)を起こす原因となる。
過剰摂取では日に1g以上のビタミンB1の摂取は排尿や排尿による脱水を引き起こすといわれている。ビタミンB1は穀物などによく含まれ、ネギやニラに含まれるアリシンと共に摂取することによってアリチアミンとなり小腸からの吸収率がよくなるといわれている。
ビタミンB2(リボフラビン):
ビタミンB2は脂質の代謝、皮膚での炭水化物、たんぱく質の代謝に関与する。ビタミンB2が欠乏すると口唇炎、口内炎などの症状が現れる。
ビタミンB2は細胞の組織たんぱく質をつくりだし成長の元になるほか、細胞の機能維持を助け、また怪我などから修復中の細胞などにとっても必要な成分である。ビタミンB2は乳製品や卵、強化米、乾燥酵母、レバーなどに含まれる。
ビタミンB3(ナイアシン、ニコチン酸):
ビタミンB3は性ホルモン、インスリン、副腎皮質ホルモンなどのホルモンを合成するのに必要。またビタミンB3は炭水化物をエネルギーにするときの補酵素として働く。また血液の循環や酸素の輸送を促進させるなど体内での様々な機能に関与し、すべての細胞において存在している。ニコチン酸は生体内では必須アミノ酸であるトリプトファンから合成され、腸内では腸内細菌から合成されるので通常ニコチン酸の欠乏を来たさない。
トリプトファンが不足するとないナイアシンの欠乏症になることがある。ナイアシンの欠乏は皮膚炎、下痢、痴呆を3徴候とするペラグラの原因となる。過剰摂取すると皮膚が紅潮してくるナイアシンフラッシュを引き起こす。これは継続的に摂取することで耐性を作ることができるといわれている。ビタミンB3はピーナッツや鶏などによく含まれている。
ビタミンB5(パントテン酸):
ビタミンB5は糖質や脂質、アミノ酸代謝に補酵素として働きエネルギー生産を行ったり、細胞の構築と筋の成長を助けます。また神経伝達、記憶、エネルギー代謝において重要な働きを持つアセチルコリンの生成に不可欠な栄養素です。パントテン酸は広く多くの食品に含まれる、また腸内細菌によっても合成される。ビタミンB5は鶏肉や魚、穀物などに含まれます。
ビタミンB6(ピリドキシン):
ビタミンB6は糖質、脂質、たんぱく質の代謝に関与しているビタミン。ビタミンB6が欠乏するとペラグラ様皮膚炎(ニコチン酸欠乏症候群)、痙攣、貧血などを引き起こす原因となる。通常は欠乏することはあまりない。アスリートにとっては一日に300mgまでが上限の摂取量であるといわれている。ビタミンB6は小麦胚芽、麦芽、クルミなどに含まれている。
ビタミンB12(コバラミン): ビタミンB12は分子の中に金属のコバルトを含む赤色のビタミンで、たんぱく質や脂質の代謝、赤血球の生成などに関与している。肝臓や牡蠣、貝類などに含まれる。通常ビタミンB12は植物性食品には含まれないが、ベジタリアンなどにおいては腸内細菌によって体内でビタミンB12が合成される。
ビタミンB15(パンガメイト、パンガミン酸): ビタミンB15は呼吸やタンパク合成、ステロイドホルモンの調節などに関与している補酵素で、主な働きは細胞への血液や酸素の供給を増加させることです。ただし欠乏症になっても副作用は見られず、本当のビタミンとは少々異なった位置にカテゴリーされているビタミンです。ビタミンB15はビール酵母、ホルモン、穀物などに含まれます。
葉酸
(フォラシン): ビタミンB群の働きを助ける物質で、赤血球の形成、細胞の形成、増殖、たんぱく質を代謝して胃酸の形成を助けるなどの働きを持っています。アスリートにとっては5mgが適度な摂取量であるといわれています。
ビオチン: 炭水化物と脂質、アミノ酸の代謝を助けます。レバー、ミルク、玄米や大豆などによく含まれます。
コリン: ビタミンB群の働きを助けてくれる物質です。またコリンは正常に脳が働くために重要な栄養素であり、また脂質やコレステロールの代謝にも関わっています。卵やレシチンなどによく含まれています。
イノシトール:
ビタミンB群の働きを助けてくれる物質です。コリンと共に脂質やコレステロールの代謝に関与しています。またイノシトールは神経インパルスの伝達において重要な働きをします。レシチンや小麦胚芽によく含まれます。
パラアミノ安息香酸(PABA): 皮膚や髪の毛にとって必須の栄養素で葉酸やパントテン酸の形成と利用を助けます。小麦胚芽や穀物によく含まれます。
ビタミンC(アスコルビン酸): ビタミンB群に似た水溶性のビタミン。ビタミンCは他のビタミンが酸化されたり、破壊されるのを防ぐ、鉄分の吸収を助ける、筋肉に乳酸が蓄積するプロセスを遅らす、結合組織を形成するたんぱく質コラーゲンをつくり軟骨、骨基質の形成、細胞間の支持する、体をストレスから守る、血中コレステロールを低下させるなど体の様々な機能に関与する物質で特にアスリートにとっては必要不可欠な栄養素である。ビタミンCはブロッコリー、柑橘類、メキャベツ、イチゴ、トマトなどに良く含まれる。
バイオフラボノイド: バイオフラボノイドは毛細血管の強化、体内のビタミンC貯蔵を助ける物質です。バイオフラボノイドは生野菜や果物によく含まれる。
ビタミンD(カルシフェロール): ビタミンDは体内において正常なカルシウム、リンの代謝に関与している脂溶性ビタミンです。ビタミンDは紫外線が皮膚にあるコレステロールに反応することによって形成され体内のホルモンと協力的に働き体液のカルシウムとリンのバランスを適切に保つ。 太陽光線はビタミンD生成にもっともよい供給源となりますのでそれほど注意してとるビタミンではありません。むしろ摂取量を増やすことにより食欲不振、かゆみ、いらいらなどを引き起こす可能性があるので取り過ぎないようにしましょう。
ビタミンE(α、β、γ、δトコフェロール): 体内において数多くの働きをする脂溶性ビタミンで抗酸化物質としてフリーラジカルと戦う、ビタミンC、A、脂肪酸などが酸化破壊されるのを防ぐ、血液の凝固を防ぎ、溶けやすくし、血管を拡張して循環をよくするなどの働きがある。ビタミンEは緑黄色野菜、全粒粉、サラダオイル、小麦胚芽などに豊富に含まれる。
ビタミンK: ビタミンKは血液凝固のプロセスに重要な働きをし、内出血を防止する。ビタミンKは脂溶性ビタミンであるため腸内細菌叢によって合成される。ビタミンKは普段の食事から十分に取れるのでサプリメントとして摂取する必要性もあまりない。
抗生物質の投与などで腸内細菌が死んでしまったような場合はヨーグルトを取ればそれで補える。ビタミンKを含む食品としては鶏卵、肉類、魚介類、海藻類などが挙げられる。赤ら顔などの場合はビタミンKクリームを塗るとその血液凝固作用により改善される場合がある。
ミネラル
最近まではビタミンはミネラルよりパフォーマンスをピークに持っていくのに必要な栄養素だと考えられていました。しかし数多くの研究によって今ではミネラルは体の機能にとって必須の栄養素であり非常に重要な役割を持っていることがわかっています。ミネラルが欠乏するとパフォーマンスのレベルは確実に低下します。例えば、十分なカルシウムや鉄がとれていなければ疲労や脱力感、怪我の危険性が上昇します。
ミネラルは植物、動物食品、水などに含まれます。しかしこれらから摂取できる量は微量であり、スポーツやその他ストレス下などにおいて消費するミネラルも多く、その必要量も増加します。ではそれぞれのミネラルの働きについてみていってみましょう。
各種ミネラルの働き
カルシウム:
体内でもっとも豊富にあるミネラルです。カルシウムは歯や骨の形成、健康な心臓の拍動の維持、血液の凝固、そして筋の収縮にとって必要です。乳製品から取るカルシウムは約10〜30%ほどしか吸収されません。ですから牛乳を飲んでいてもカルシウムが欠乏している人は少なくはありません。
カルシウムが欠乏すると疲労骨折になる可能性も出てきます。カルシウムの吸収率を下げないために多量の脂肪やリン、甘いもの、シュウ酸、フィチン酸の摂取などに気を配り、とくにアスリート、子供や授乳、妊娠中の女性、お年よりはしっかり必要量を満たすようにしましょう。
マグネシウム:
もう一つ収縮(特に弛緩する際)に欠かせないミネラルはマグネシウムです。他にもマグネシウムはビタミンC、カルシウム、カリウム、リンの代謝を助ける、酸とアルカリのバランスを整える、心臓脈管系の機能と健康を維持する、ビタミンB群やEの働きを助けるなどの働きがあります。
マグネシウムが欠乏すると疲労、痙攣、筋肉がつる、筋力低下などの症状を引き起こします。マグネシウムを豊富に含む食品としては大豆、温野菜、玄米、全粒粉、リンゴ、種子、ナッツ類などがあげられます。
リン:
リンはATPの構成要素で炭水化物、脂質の分解、エネルギー生産に不可欠な要素です。ただリンの取りすぎはカルシウムの吸収を阻害するためカルシウムとリンのバランスは2:1となるようにしましょう。リンを豊富に含む物質といえば魚、家禽類、穀物、卵、ナッツなどに豊富に含まれます。
鉄:
鉄はたんぱく質やどうと結合してヘモグロビンを形成し、赤血球に乗って体中に酸素を運搬するのに必要です。しかし鉄は長期間にわたって一日に50mg以上摂取すると有毒になるといわれています。興味深いことに、コーヒーやお茶を摂取することで鉄の吸収を阻害することができます。
鉄を豊富に含む食品はなんといっても牛肉でしょう。サプリメントで摂取する際には硫化鉄、アスコルビン酸鉄、フマル酸鉄など吸収のいいものを選ぶようにしましょう。あと子供にとって鉄の摂取は消化器系にダメージを与え、ショックから昏睡、時には死にいたる危険性もあるので鉄のサプリメントを摂取する際には子供の手の届かないところにおいておくようにしましょう。
銅:
銅は鉄をヘモグロビンに変換するのを助け、ビタミンCの体内での利用を促進させます。ほとんどの食品に銅は含まれています。
亜鉛:
亜鉛はタンパク合成のための仲介役として細胞の成長に関与したり、ビタミンAやビタミンB群の働きを促進します。また生殖器や前立腺の正常な機能や健康の維持するのに必要とされます。亜鉛は牡蠣、全粒粉、卵などに豊富に含まれます。
マンガン:
マンガンは内分泌腺の分泌、脂質、たんぱく質、炭水化物の代謝、脳、神経、筋肉の機能維持などに関わっています。マンガンを大量に摂取すると鉄の吸収を阻害します。マンガンを豊富に含む食品としては緑の野菜、全粒粉などがあげられます。
ナトリウムとカリウム:
筋肉を最大限に動かすために必要なミネラルです。これらのミネラルは神経刺激の伝達のためにはなくてはなりません。欠乏症になると痙攣や脱力を起こします。カリウムを豊富に含む食品としては緑の葉が付いている野菜、バナナ、柑橘類、ドライフルーツなどです。一方ナトリウムは塩に含まれますがその他ありとあらゆる食品にはナトリウムが含まれていますのであえて摂取する必要性は全くありません。
ミネラルの必要量は年齢、性別、遺伝的体質、過去の病歴、現在のトレーニングの内容などにより大きくことなってきます。ですから下に示してあるガイドラインはあくまでもガイドラインであり万人にとって具体的な推奨摂取量ではありません。
栄養素 |
サプリメントでの形態 |
PDI |
ビタミン A |
酢酸ビタミンA、ベータカロテン、
パルミチン酸ビタミンA |
5,000 IU から 25,000 IU |
βカロテン |
ベータカロテン |
15,000 IU から 80,000 IU |
ビタミン D |
(D2) エルゴカルシフェロール、
(D3) コレカルシフェロール |
400 IU から 1,000 IU |
ビタミン E |
ミックスドトコフェロール、D−コハク酸トコフェロール、DLトコフェロール |
200 IU から 1,000 IU |
ビタミン K |
(K1) フィロキノン
(K2) メナジオン |
80 mcg から 180 mcg |
ビタミン C |
アスコルビン酸、ローズヒップ |
800 mg から 3,000 mg |
ビタミン B1 |
塩酸チアミン(HCI) |
30 mg から 300 mg |
ビタミン B2 |
リボフラビン |
30 mg から 300 mg |
ビタミン B3 |
ナイアシンアミド、ナイアシン |
20 mg から 100 mg |
ビタミン B6 |
ピリドキシン、塩酸ピリドキシン |
20 mg から 100 mg |
葉酸 |
葉酸 |
400 mcg から 1,200 mcg |
ビタミン B12 |
シアンコバラミン |
12 mcg から 200 mcg |
ビオチン |
ビオチン |
125 mcg から 300 mcg |
パントテン酸 |
d-パントテン酸カルシウム |
25 mg から 200 mg |
カルシウム |
炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、リンゴ酸カルシウム、グリシン酸カルシウム |
1,200 mg から 2,600 mg |
リン |
リン |
800 mg から 1,600 mg |
マグネシウム |
酸化マグネシウム、グリシン酸マグネシウム |
400 mg から 800 mg |
鉄 |
フマル酸第一鉄, グリシン酸鉄 |
25 mg から 60 mg |
亜鉛 |
クエン酸亜鉛、アルギン酸亜鉛 |
15 mg から 60 mg |
ヨウ素 |
海藻からのヨウ素 |
200 mcg から 400 mcg |
セレニウム |
セレノメチオニン |
100 mcg から 300 mcg |
銅 |
リジン酸銅、グルコン酸銅 |
3 mg から 6 mg |
マンガン |
アルギン酸マンガン、グリシン酸マンガン、グルコン酸マンガン |
15 mg から 45 mg |
クロミウム |
2ニコチン酸クロミウム、グリシン酸クロミウム、クロミウムピコリネイト、多ニコチン酸クロミウム |
200 mcg から 600 mcg |
モリブデン |
モリブデンキレート |
100 mcg から 300 mcg |
ナトリウム |
塩化ナトリウム* |
1,500 mg から 4,500 mg |
塩素 |
塩化ナトリウム* |
1,500 mg から 4,500 mg |
カリウム |
塩化カリウム |
2,500 mg から 4,000 mg |
ボロン |
ボロン3キレート、グリシン酸ボロン、クエン酸ボロン |
6 mg から 12 mg |
コリン |
コリン酒石酸塩、二水素クエン酸コリン、フォスファチジルコリン |
600 mg から 1,200 mg |
イノシトール |
ミオ−イノシトール |
800 mg から 1,200 mg |
バイオフラボノイド |
シトラス、ルチン、ヘスペリジンバイオフラボノイド |
200 mg から 2,000
mg |
|
IU= International Units(国際単位), mg= ミリグラム,
mcg=
マイクログラム
*ナトリウムと塩化化合物は主に食事から摂取できるのでサプリメントとして摂取する必要はないでしょう。とく日本食には塩分はたくさん含まれているので逆に少し控えるくらいでちょうどいいです。
参考文献 シンプル生化学(改訂4版、南江堂)
|
|
|
|