トレーニングの基本原則
トレーニングを行うに当たって基本となるトレーニング原則を以下にあげてみた。基本に忠実にコツコツと地道に努力を重ねていくのが結局は近道となることが多いので、ズルをせず基礎から着実に固めて行たいものである。
- 5 R's の原則:
- トレーニングを行うに当たってRを頭文字とする5つの重要な要素。トレーニングを構成するに当たって重要な原則となる。
- Range of motion:
- 筋肉がストレッチされるポジションから収縮されるポジションまでの筋肉の可動域のことをいい、すべてのエクササイズはその動作において筋肉に負荷がかかる可動域の範囲で行われなければならない。
- 目的によるが、可動域にこだわり過ぎるとあまり使用重量を伸ばすことが難しくなり、使用重量にこだわり過ぎると可動域が狭くなりがちである。特定のやり方に固執してしまうことは怪我の危険性を高め、成長を遅らせてしまう可能性があるので、可動域もケースバイケースで調節したいところである。
- Resistance:
- バーベルやダンベル、マシンなどを用いて身体にかける負荷のことを指す。
- Repetitions:
- レペティションとはそれぞれのエクササイズのおいて何回動作を繰り返しせるかという意味である。回数は〜RM(Repetition
Maximum(最大反復回数)の略)を用いて表され、例えば、1RMとは一回しか反復できない重さでトレーニングすること、10RMとは最大10回反復できる重さでトレーニングすることを意味する。
テンポにもよるが、一般的に3〜8RMでは絶対筋力、10〜20RMでは無酸素性筋持久力、20〜RMでは有酸素性筋持久力を向上させると言われている。
1レップスを行う場合の筋の緊張時間をエキセントリック2秒、ストレッチ+コントラクト0,5秒、コンセントリック0,5秒と考えた場合1レップスあたりにかかる時間は3秒、この計算で行くと絶対筋力は9〜24秒、無酸素性筋持久力は30〜60秒、有酸素性筋持久力では60〜秒の筋の緊張時間となる。
種目や可動域、可動域の調節を行うことによって、緊張時間の調節、同じ種目でもテンポを変えるだけで刺激の仕方を変えることが出来るので、色々と試してみてほしい。
- Rest:
- これはワークアウトとワークアウトのインターバルの事を指す。基本的には各セットごとのインターバルは筋収縮を行うときのエネルギーとなる細胞のATPやPCの再合成のため最低2分から4分ほど必要とされている。使用重量は下がってしまうが、インターバルを詰めて、強度を上げるという方法も有効である。
- Recovery:
- 目的、強度にもよるが基本的なルールとして二日間続けて同じ部位のトレーニングを行ったり、一週間に三度同じ部位のトレーニングを行うと筋肉の回復プロセスに影響を与えてしまったり、疲労により怪我への危険性が高まると考えられている。
- 強度の高いトレーニングを行い続けていると神経系への疲労が高まりトレーニングの強度を高く保つことが難しくなってくる。ピリオダイゼーションなどのサイクルトレーニングを用いて強度と頻度の調節を行うことで無駄なオーバートレーニングやオーバーユース、燃え尽き症候群は防ぎたいところである。
- FITTの原則:
- これはFrequency(頻度)、Intensity(強度)、Time(時間)、Type of exercise(トレーニングの種類)の頭文字をとってつけられたトレーニング原則で5R'sの原則と同じくトレーニングを構成するのに重要なトレーニング原則である。
- Frequency(頻度):
- どのくらいの頻度でトレーニングを行うか。目安として初心者は週三回、中、上級者は週5回、アスリートなどはウエイトトレーニング以外の技術トレーニングを含めてそれ以上となるだろう。
- Intensity(強度):
- どのくらいハードにトレーニングを行うか。週に二度か三度のトレーニングであれば高強度で行えるが、週5回以上トレーニングを行う場合は週ごと、隔週ごと、月ごとに変化をつけて停滞や怪我などを防ぎたいところである。
- Time(時間):
- 一回のトレーニングでどれだけ時間をかけるか。目的にもよるが、無酸素系の運動の場合は1時間、有酸素系の運動の場合は2〜3時間が目安となるだろう。
- Type of exercise(トレーニングの種類):
- どのようなエクササイズを行うか。初心者の場合は一度に全ての筋肉、もしくは上半身、下半身に分けるなど比較的頻繁に各筋肉群を刺激するとよいだろう。競技選手のトレーニング内容はオンシーズン、オフシーズン、試合前などによって強度と内容を調節する必要がある。
- 個別性の原則:
- トレーニングを行い適切な食事、休養をすることによって誰もが変化を得ることが出来る。しかし骨格や体質、遺伝的な要因、外部環境、ストレスレベル、生体リズムによってそれらの反応には個々人、個々の生活のスタイルによって異なってくる。
- トレーニングへの反応、適応が早くすぐにその成果が体感できる人もいればそうでない人もいる。しかしここで重要なのはそれに一喜一憂されることなく継続して成長し続けていくことである。基本的に日常生活を送れないほどの遺伝的な疾患がある場合以外は筋は刺激が与えられていれば反応する。一向に変わらないという場合はアプローチに問題がある可能性が高い。
超回復の原則:
- ストレスへの反応は自然の全ての物事に適応する法則といっても過言ではない。筋肉も例外ではなく与えられたストレスへの反応として筋肉が大きくなったり、筋力が増大したりするものである。ただ一般的にいう超回復というプロセスがすべての刺激に対して起こるかといわれるとそうでもないようである。
- 過負荷の原則:
- 超回復の原則に関連して、身体に発達のシグナルとなるストレスを与えるためには既に適応している刺激を与え続けていてもそれは発達を与えるためのシグナルとならない。基本は前回のトレーニングより一回でも多く(化学的ストレス)、もしくは一キロでも重いものを同一フォームの上で挙げること(機械的ストレス)である。
- 使用/不使用の原則:
- 使うか使わないか。これはトレーニングによってストレスを与えなければ、日常でかかるストレスに耐えうる体しか維持できないということである。これは可逆性の法則として知られている。しかしながらトレーニングを行っていた人がなんらかの理由でトレーニングをやめてしまった場合に関しては、マッスルメモリーと呼ばれる神経筋システムの変化が筋肉に記録として残るためトレーニングを行っていなかった人に比べて筋力や筋量は元あったレベルまで比較的容易に戻すことが出来る。
- SAIDの原則
- これは”課せられた要求に対する特定の適応”(Specific Adaptation to Imposed
Demand)の頭文字をとった法則で、例えば、リミットストレングスを向上させるのであればリミットストレングスを向上させるためのレップ数の少ない強度の高いトレーニングを行う、心肺持久力を向上させるのであれば心肺持久力を向上させるためのトレーニングを行うなどがそれにあたる。
- 特異性の原則:
- ある特定の種目、例えばスクワットを向上させたい場合はレッグエクステンションではなくスクワットを行う、競技を行っている場合はその競技の練習を行う。当然なのだが目的に沿って特異的なプログラムを構成出来ていないケースも多々見受けられる。繰り返しトレーニングを行っていると神経筋システムが適応し、よりスムーズに動作が行えるようになる。
- GASの原則:
- これはgeneral adaptation syndromの頭文字をとったものでストレスへの適応についての原則です。ストレスの度合いは以下の三つに分類される。
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- 警告段階:
- トレーニングでのストレスへの適応(過負荷の原則)
- 抵抗段階:
- 与えられるストレスに対して筋肉が効率よくストレスへ抵抗する状態(SAIDの原則、超回復の原則、使用/不使用の原則)
- 消耗段階:
- ストレスを与えすぎた場合、ストレスへの適応が出来ない状態、つまりパフォーマンスの低下、トレーニングが効率よく出来ない状態となる。
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