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■屈筋腱外傷回復のインビトロ検査:乳酸とTGF−β(トランスフォーミング成長因子、形質転換成長因子)の発現と機能的活性
Yalamanchi N, Klein MB, Pham HM, Longaker MT, Chang J
スタンフォード大学メディカルセンター形成外科 CA. 94305, USA. 

乳酸とTGF−βはコラーゲン生成、腱鞘、外腱鞘(外腱鞘膜組織)、内腱鞘の修復にとって重要な仲介役としての機能を持っているということが証明されている。この研究では屈筋腱細胞におけるTGF−βペプチド、TGF−β受容体の生成に乳酸がどのように関与しているかについて調査された。
 
この研究ではウサギの腱鞘繊維芽細胞、外腱鞘(外腱鞘膜組織)細胞、内腱鞘細胞をそれぞれ別々の器内に培養し、その各々の細胞に50mMの乳酸を補完し、TGF-βペプチドアイソフォーム(β1、β2、β3)とその3つの受容体アイソフォームである(R1、R2、R3)を酵素免疫測定[吸着]法によって評価した。
 
媒介である乳酸を補完し培養された細胞において、すべてのTGF-βペプチドアイソフォーム(β1、β2、β3)とその3つの受容体アイソフォームである(R1、R2、R3)は大幅に増加していた。腱鞘繊維芽細胞においてはβ1、β2ペプチドアイソフォームの発現がそれぞれ30%、23%の増加、内腱鞘細胞のβ3ペプチドにおいては32%の増加、外腱鞘(外腱鞘膜組織)細胞の受容体アイソフォームにおいてはR1において17%、R2において19%の大幅な増加が見られた。

また乳酸を補完したすべての腱細胞におけるTGF−βの機能的活性が見られた。外腱鞘(外腱鞘膜組織)細胞においてはコントロール群の4倍の活性、腱鞘繊維芽細胞においてはTGF−βの機能的活性はすべての細胞の中での最高値を示した。
 
乳酸は大幅にTGF−βペプチド(β1、β2、β3)の発現、受容体(R1、R2、R3)の発現とその機能的活性に関与し、腱細胞コラーゲン生成を行う上で乳酸が調整役として重要な役割を持っていることを示唆している
 

■屈筋腱外傷回復のインビトロ検査:乳酸のコラーゲン生成と腱細胞増殖効果について
Klein MB, Pham H, Yalamanchi N, Chang J.
スタンフォード大学メディカルセンター形成外科 CA. 94305, USA.
 
乳酸が屈筋腱外傷回復について何らかの役割を持っていることは以前から知られていた。この研究ではウサギの前足の腱と腱鞘を摘出し、腱鞘繊維芽細胞の増殖、内腱鞘細胞、外腱鞘(外腱鞘膜組織)細胞、それぞれの細胞におけるコラーゲンの生成について、また乳酸のコラーゲン生成と細胞増殖効果について調査された。
 
それぞれの細胞は分離して培養された。その結果、腱鞘繊維芽細胞の増殖、内腱鞘細胞、外腱鞘(外腱鞘膜組織)細胞それぞれの細胞においてコラーゲンI、II、III型すべてにおいて増殖が見られた。特に腱鞘繊維芽細胞の増殖は顕著だった。

このことからin vitroの実験においては乳酸がコラーゲン生成、細胞増殖について大いに効果を持つことが証明された。このことは乳酸レベルの調節とコラーゲンレベルの調節とは密接な関わりがある可能性があるといえるだろう。
  
●おまけ:
TGF-βは,TGF-β受容体とシグナル伝達因子Smad蛋白質を介してシグナル伝達をする。 TGF-β1、β2の受容体の不活性化は、癌化を含めいろいろな疾患の原因となることが知られている。またTGF-β受容体とTGF-βシグナル伝達因子は癌抑制作用をもつことが報告されている。


外傷回復は細胞修復のためのパラダイムとなるか
Hunt TK, Hussain MZ.
Department of Surgery and Restorative Dentistry, University of California, San Francisco 94143.

外傷における細胞の成長、結合組織、細胞間質の沈着、脈管形成は乳酸の生成が充満しNAD+が枯渇することによって行われる。この代謝調節機構は筋発達にも関与していると考えられる。

 
 
 
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