乳酸は大幅にTGF−βペプチド(β1、β2、β3)の発現、受容体(R1、R2、R3)の発現とその機能的活性に関与し、腱細胞コラーゲン生成を行う上で乳酸が調整役として重要な役割を持っていることを示唆している。
■屈筋腱外傷回復のインビトロ検査:乳酸のコラーゲン生成と腱細胞増殖効果について
Klein MB, Pham H, Yalamanchi N, Chang J.
スタンフォード大学メディカルセンター形成外科 CA. 94305,
USA.
乳酸が屈筋腱外傷回復について何らかの役割を持っていることは以前から知られていた。この研究ではウサギの前足の腱と腱鞘を摘出し、腱鞘繊維芽細胞の増殖、内腱鞘細胞、外腱鞘(外腱鞘膜組織)細胞、それぞれの細胞におけるコラーゲンの生成について、また乳酸のコラーゲン生成と細胞増殖効果について調査された。
それぞれの細胞は分離して培養された。その結果、腱鞘繊維芽細胞の増殖、内腱鞘細胞、外腱鞘(外腱鞘膜組織)細胞それぞれの細胞においてコラーゲンI、II、III型すべてにおいて増殖が見られた。特に腱鞘繊維芽細胞の増殖は顕著だった。
このことからin vitroの実験においては乳酸がコラーゲン生成、細胞増殖について大いに効果を持つことが証明された。このことは乳酸レベルの調節とコラーゲンレベルの調節とは密接な関わりがある可能性があるといえるだろう。
●おまけ:
TGF-βは,TGF-β受容体とシグナル伝達因子Smad蛋白質を介してシグナル伝達をする。
TGF-β1、β2の受容体の不活性化は、癌化を含めいろいろな疾患の原因となることが知られている。またTGF-β受容体とTGF-βシグナル伝達因子は癌抑制作用をもつことが報告されている。
■外傷回復は細胞修復のためのパラダイムとなるか
Hunt TK, Hussain MZ.
Department of Surgery and Restorative Dentistry, University of
California, San Francisco
94143.
外傷における細胞の成長、結合組織、細胞間質の沈着、脈管形成は乳酸の生成が充満しNAD+が枯渇することによって行われる。この代謝調節機構は筋発達にも関与していると考えられる。