・一般に腹斜筋群は仙町関節の安定化作用があるといわれている。ところが、足を組み、股関節を屈曲、内転することによって、大殿筋や梨状筋、あるいは後仙腸靭帯が伸張位になる。
・立位に比べて、普通の座位では7.8パーセント、足を組んだ座位では21.4パーセント、梨状筋が伸張される。またその張力によって仙腸関節への圧迫力も高まる(3)。
すなわち、足を組んだ座位では仙腸関節をまたぐ筋の伸張による張力が、腹筋群の収縮に代わって、仙腸関節の安定化作用を担っている。
■【ヒトは骨盤、腰椎の安定性を得るために異なる方法を巧みにスイッチングしながら、筋の疲労や関節周囲組織への過剰なストレスを避けて座り続けるという戦略をとっている。
たとえ「良い姿勢」であっても、ある1つの姿勢をとり続ければ、いずれどこかの組織に無理がかかって破綻してしまう。
長時間にわたって同一の姿勢が続くと、椎間板を構成する髄核や繊維輪から水分が搾り出されてしまうという危険性(クリープ減少)もある。】
■【そういった意味では、他の座位姿勢のパターンは「悪い姿勢」なのではなく、その人が使うことが出来る手持ちの札であると考えたほうが良いのかもしれない。手持ちの札が少ないことこそが、快適な座位での生活を妨げる。
実際に、腰痛症の患者では、良い姿勢の座位から座位を崩した座位へ変換する際も骨盤や脊柱の動きの幅が小さく、姿勢を変化させる能力も低くなっていることが知られている(4)。】
『ヒトの動き百話』1-17 良い姿勢を取り続けることは良いことか? 建内宏重 より引用
2. Why leg crossing? The influence of common postures on abdominal muscle activity.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8578373
3. Functional aspects of cross-legged sitting with special attention to piriformis muscles and sacroiliac joints.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16260074
4. Differences in sitting postures are associated with nonspecific chronic low back pain disorders when patients are subclassified.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16540876
●床ずれにならないように寝返りを打って負担を軽減させるように、日常生活において、ある特定の姿勢で、特定の組織に負担がかかり続けないように体勢を変えてストレスを分散させるように、トレーニングも同じように考えることはできないでしょうか。
特定の種目においてオーバーロードをかけ続けると、どこかの時点で関節への負担が大きくなるので、角度を変えて刺激を分散させること。関節は消耗品ですし、筋肉も一度断裂してしまうと身体の使い方に影響を与えてしまいます。
年齢を重ねたり、使用重量が重くなるにつれ、トレーニングそのものだけでなく、コンディショニング(身体はすべて繋がっているので出来れば全身手入れしたい)、ストレスの分散(強度的にも角度的にも)は是非とも取り入れていただければと思います。