「「人差し指で向こうを指して、その指を全力で伸ばしてください」
そう言われたとき、本気で全力を出し切って伸ばせる人はそう多くはありません。本人は指を全力で伸ばしたつもりでも、実はまだ十分に伸びていないのです。
指を全て伸ばしきるには、手や指の力だけでは足りません。腕の力を加えても足りません。その方法は本文で詳しく解説しますが、結論から言うと、一本の指を完全に伸ばすためには全身の筋肉を総動員しなければできないのです。
たった指一本を全力で伸ばすためにも全身の力が必要なのです。
(中略)
本気で全力を出し切ることを実践して初めて、集中力が身に付くのです。
指一本伸ばすような単純な動作でも全力で取り組むことができるようになると、集中力が高まり、今まで気づかなかったことに気づけるようになります。見えなかったことが見えるようになり、感じることが出来なかったことが感じられるようになります。
そこで初めて完全に調和した「ゾーン」というものが現れるのです。」
『ゾーンの入り方』 室伏広治
人間の骨と骨(硬組織)は、筋肉や腱、靭帯などの軟組織によって交互に連結されており、その数は、関節が約300、骨格筋が約400(平滑筋や心筋も入れると約600)あると言われています。
その中のいずれかにストレスが生じると、骨の配列や、それに関係する筋肉の調和が乱れ、それによって軟組織の内圧が変化し、神経やリンパ、血管循環などに悪影響を与えて、内臓や中枢神経に様々な障害を引き起こします。
このようなストレスを身体にたくさん抱えれば抱えるほど、身体はより疲れやすく、怪我をしやすくなり、回復能力、消化能力は低下し、自律神経は乱れ、連鎖的に内にも外にも様々な悪影響を与え、身体が本来持っている機能が抑制されて使えなくなってしまいます。
身体は、どこか一箇所だけが大切、というのはありません。
身体は全体でひとつの単位(ユニット)として動いていますので、全部位、大切で、尚且つ、すべての調和が取れている必要があります(5年後、10年後、身体がボロボロになっても良いんだ!という方には必要ないことかもしれませんが)。
調和が取れている人の身体というのは至ってシンプルなのですが、多くの人の身体は日常生活やスポーツにおける身体の使い方のクセが習慣となって(その習慣が長ければ長いほど)、複雑になってしまっています。
それらの調和を取るために、最も基本となることは、正しい姿勢を作ることです。
一般的に理想的といわれる姿勢は
●前から見た場合:
頭=傾き、回旋していない
肩=左右水平
骨盤=水平
股関節=中間位にあり、外転、内転しておらず、外旋、内旋もしていない。
脚=まっすぐ
足=平行
●後ろから見た場合:
頭=傾き、回旋していない
肩=左右水平
肩甲骨=中間位で、左右平行
骨盤=水平
股関節=中間位にあり、外転、内転しておらず、外旋、内旋もしていない。
脚=まっすぐ
足=平行
●横からみた場合:
頭=中間位で前や後ろに傾いていない
頸椎=少し前湾した自然なカーブを描いている
肩甲骨=背部に沿っている
胸椎の棘突起=やや後湾した自然なカーブを描いている
腰椎の棘突起=やや前湾した自然なカーブを描いている
骨盤=中間位
股関節=中間位
となります。
姿勢が正しければ、上下、左右、前後のバランスがとれ、身体に不必要なストレスをかける必要がなくなります。
身体は左右対称ではありませんが、左右の形、可動域、機能はほぼ同様であるべきで、この差が大きくなればなるほど、故障する可能性が高くなります。
身体にいくつもの歪みがあり、筋肉のバランスが崩れ、常に過剰なストレスがかかった状態でハードなトレーニングをすると、負荷をかけてより悪い方向に矯正しているのと同じですから、更に身体を壊すためのトレーニングとなってしまいます。
正しい姿勢さえ崩さなければ、身体のあらゆる問題を単純化することができます。
一旦身体をシンプルな状態にすることが出来れば、あとはストレスがかかった場合でも、各部位をニュートラルな位置に戻すために
・短くなった部位は伸ばす。
・伸びた部位は縮める。
・ねじれた部位はもとに戻す。
・下がった部位は引き上げる。
・上がった部位は下げる。
・柔らなくなった部位は引き締める。
・硬くなった部位は柔らかくする。
・冷たい部位は温める。
・熱い部位は冷やす。
自分が最適な状態でいれるように、微調整していくだけです。
身体のどこかにストレスを感じる方は、一度、撮影するなどして自分の姿勢をチェックし、評価し、作戦を練ってみてくださいね。
姿勢が安定すれば、素晴らしいトレーニングプログラムや栄養摂取、サプリメントの効果もより体感できるはずです。