オーバートレーニングを評価するに当たって、生化学的指標などの臨床評価とともに、干渉する可能性のある因子を認識し、それらの影響を考慮することが必要である。
●急性運動
運動誘発における生化学的変化は一過性であり、運動中止後、数時間で運動前レベルに戻る。血漿中の乳酸、アンモニア、カテコールアミンの値は、免疫システムのいくつかの指標(リンパ球など)と同じように二時間以内に運動前の値に戻る。
コルチゾルやテストステロン、アミノ酸の血清濃度低下(特にグルタミン)のような血清ホルモン濃度は、恒常状態に戻るまで何時間もかかる。
エピネフリン、尿酸値、コルチゾル、尿素の高値、血清テストステロン、アミノ酸の濃度低下など、完全な生化学的恒常状態は、一回のトレーニング期や競技会から24時間の休養後でも完全に元には戻らなかった。
血漿クレアチンキナーゼ活性上昇は7日間、筋グリコーゲン再合成は最大72時間を要することが確認されている。
●生物学的リズム
多くの生物学的機能は特徴的な概日周期(24時間)、月経周期(4週間)、概年周期(1年)を示す。
概日周期はコルチゾル、フリーおよび総テストステロン、尿酸、グルタミン、の血清濃度を含む一連の生物学的パラメータで、また同様に筋グリコーゲン量、および数々の細胞性免疫パラメータで認められている。
身体活動や休息の日々におけるサイクル、季節変動が、どの程度概日リズムの観察に影響を与えるかは明確ではないが、24時間サイクルで最大3,5%の身体運動の有意な変動も多くの研究で強調されている。
●血漿量
異なった環境や生理学的状態で、血漿量の少なからざる変化を強調している。これらの変化は、一過性の体液移動、血管スペースへの移動(血液希釈)、血管内スペースからの移動(血液濃縮)によるものと考えられている。
オーバートレーニングの指標として、定期的に測定される全ての血漿成分は、血漿量の変化で補正されなければならない。この必要性をさらに強調すると、血漿量の推移はまた暑熱馴化、給水状態、体位の変化と関連しており、これら全てが通常の評価の際に異なるかもしれない。
●年齢
加齢変化は、ヘモグロビン、ヘマトクリット、血清フェリチンレベル、筋グリコーゲン量、特に男性におけるトータル、および遊離テストステロン濃度などの無数の神経内分泌変化、多くの免疫機能パラメーター、などの数多くの生物学的機能に影響することが報告されている。
●食事の影響
カテコールアミン、コルチゾル、尿酸、アミノ酸、およびその他の生物学的指標の血漿濃度に及ぼす食物摂取の急性効果が記録されている。
臨床的評価のための血液検体は絶食期間後に採血なされるべきであり、オーバートレーニングの血漿成分の変化についての研究でも絶食時の血液検体を用いることが明記されている。