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@ストレスと運動

運動は骨格筋の収縮運動によって行われます。

骨格筋の増量機構

トレーニング
(物理的な力による力学的ストレス・種々の化学物質による化学的ストレス)

筋たんぱく質の合成(促進?)>筋タンパク質の分解(抑制?) ・サテライト細胞の増殖・融合

筋細胞の肥大・筋細胞の増殖

筋肥大


筋収縮に伴うストレス

筋収縮

機械的ストレス 力・伸展・短縮・圧迫
化学的ストレス 乳酸↑・水素イオン(H+)↑・ADP↑・無機リン酸(Pi)↑・ATP↓・Po2↓


A骨格筋の肥大と増殖

筋力トレーニングなどによる筋細胞に対する負荷の増大によって筋細胞自体が肥大します。また小さな中心核をもった筋細胞も認められるようになります。通常筋細胞の核は形質膜下周辺に存在していて筋細胞形質の中心にはありません。


筋細胞への分化

筋細胞は複数の筋芽細胞から形成されます。筋芽細胞は増殖し一定方向に配列しながら細胞融合を経て筋管細胞(myotube)となります。

筋管細胞では細胞の中央部の核が、周辺に筋原繊維が、細胞の長軸方向に並んでいます。

このような筋管細胞にさらに筋芽細胞が融合しながら成熟した筋細胞(筋繊維)が形成されます。

幼若な筋管細胞から筋繊維への分化過程で核が細胞表面へ移動します。したがって筋力トレーニングなどにより出現する中心核を持った筋細胞は筋細胞への負荷増大は筋細胞の増殖をもたらすという考えを支える根拠のひとつとなります。

またラットに対して高強度トレーニングを行うことで枝分かれした細胞(branched fiber)芽出現されていることが報告されていますが筋細胞分岐のメカニズムは明らかにされておらず、筋細胞の増殖をもたらす生理的機構なのかも明らかになっていません。

骨格筋細胞のタンパク質は発育に伴って表現型が変化することが知られています。

例えば、収縮装置を構成するタンパク質であるミオシン重鎖は胎児型、新生児型、成熟型と発育に伴ってそのアミノ酸組成やその性質などに違いが見られます。これらの違いは発育に伴って変化していくもので成熟後に胎児型や新生児型のミオシンジュウサを見ることは出来ません。

しかしトレーニングにより筋細胞への負荷を増大させると胎児型と新生児型のみのミオシン重鎖のみを発現した筋細胞胎児型と新生児型あるいは新生児型と成熟型の二種類のミオシン重鎖を発現した筋細胞胎児型や新生児型そして成熟型の三種類のミオシン重鎖を発現した筋細胞などの筋細胞が見られるようになります。

このミオシン重鎖発現パターンの変化も負荷増大により筋細胞が増殖したことを表す根拠の一つでこのような筋細胞の増殖が筋組織としての肥大の一部に関与しているということは間違いないと考えられています。


B筋細胞の肥大とサテライト細胞・筋由来管細胞

サテライト細胞は筋の基底膜と形質膜の間に存在する紡錘をした単核の細胞で未分化な骨格筋細胞(筋芽細胞)と考えられています。一般には将来筋細胞となることが決定付けられている組織幹細胞(stem cell)に該当するで、条件によっては脂肪細胞や骨細胞への分化が可能な多能性幹細胞としての性質を持っています。

サテライト細胞は自己増殖が可能であり、トレーニングや損傷などによって生じた各種ストレスに応じて増殖し、新たな筋細胞を形成したり、既に存在する筋細胞に融合して筋肥大を引き起こしていると考えられています。


Cストレスと筋タンパク質の変化

筋細胞を構成するタンパク質は常に新しいものが作り出され(合成)、古いものあるいは傷ついたものが破壊(分解)されています。つまり合成に動的バランスが傾けば筋タンパク質の増量が促され、その逆では減少が促されるということですね。ですから単純に考えればタンパク分解系ではなく常にタンパク合成系にバランスが傾いていれば筋肥大できるということになります。


D固体としてのストレスの受容と筋細胞の肥大

トレーニングにより筋細胞が肥大するときにはサテライト細胞や筋SP細胞(筋由来管細胞、筋side population 細胞)が中心的な役割を果たしています。ではこうした細胞は具体的にどのようにトレーニングを受けいれているのでしょうか?

現在考えられているものは

・個体レベルでの神経−内分泌系の応答
・細胞レベルでの機械的ストレス
・細胞レベルでの化学的ストレス

が挙げられます。

またトレーニングなどの負荷増大に伴う筋細胞の肥大、増殖にはたんぱく質の合成系の促進、分解系の抑制も伴わなければいけません。現在、負荷の増大がタンパク合成促進にシグナルを作り出すきっかけとなってると考えられており、筋増量へのきっかけとなるさまざまな因子が発見されていますのでそれぞれの因子についてちょっと見てみましょう。

神経系因子
中枢神経と筋細胞を結び、収縮シグナルを伝達するのが運動神経細胞軸索終末と筋細胞の結合部に形成される神経筋結合部(運動終板 end plate)です。神経因子は神経活動に伴って神経筋結合部より筋細胞に対して分泌され、筋タンパク合成を促すシグナルとして働くことで筋肥大をもたらすと考えられています。

主な神経系因子としては収縮シグナル伝達物質の本体である

・アセチルコリン(Acetylcoline)
・アグリン(Agrin)
・カルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin gene-related peptide,CGRP)
・ARIA(Acetylcoline receptor-inducing activity protein,アセチルコリン受容体誘発活動タンパク質)

などが挙げられます。

しかしながら内分泌系と同様に除神経など神経系の影響を除外しても、筋細胞に直接負荷を与えることで筋細胞は肥大します。従って筋肥大に関与はしているものの神経系因子は必須ではないものと考えられます。


タンパク同化促進ホルモン

タンパクを同化するホルモンであるテストステロン、成長ホルモン、インスリンなどは筋増量を引き起こす因子として良く知られ、
これらは内分泌系因子として血液を介して細胞内でのタンパク質を合成します。
こうした内分泌系因子の分泌は筋への血流を抑制すると増大することから、筋に存在する受容器を代謝物受容体反射によって視床下部、下垂体系が刺激されることによると考えられます。
逆にそれぞれのホルモン分泌を抑制(内分泌腺除去)しても骨格筋肥大は認められます。従って、神経系因子ともにこうしたタンパク同化促進ホルモンは骨格筋の成長や増殖と密接な関係にあるものの必須ではないと考えられます。


筋タンパク質増加のシグナル伝達

以上のように個体として受容された運動ストレスは神経系因子や内分泌系因子の分泌を促して筋肥大を引き起こします。
では神経系因子や内分泌系因子により活性化される筋細胞内シグナル伝達系はどうでしょうか?
これまでに
●チャネル連結型受容体によるリガント依存性チャネル系
・電位依存性イオンチャネルによる電位依存性チャネル系
●触媒型受容体でチロシンキナーゼによるチロシン残基のリン酸化による情報伝達を行うチロシンキナーゼ系
・触媒型受容体でセリン−スレオニンキナーゼ活性をもち転写因子であるSTATなどをリン酸化するセリン−スレオニンキナーゼ系
●触媒型受容体でサイクリックAMPやサイクリックGMPを介して情報を伝達するシクラーゼ系
・触媒型受容体でイノシトール1,4,5-三リン酸やジアシルグリセロールを介して情報伝達を行うホスホリパーゼ
●その他脂溶性ホルモンの受容体である核内受容体
などが明らかになっています。

E筋細胞由来成長因子

内分泌腺除去や除神経などにより内分泌系や神経系の影響を除去しても筋細胞に直接負荷を与えることで骨格筋細胞は肥大します。このことは、筋細胞にストレスが負荷されることで、遺伝子発現を増加させる別の因子が誘導されることを示唆しています。

こうした物質はサイトカインの一種であり、成長因子または増殖因子と呼ばれます。

従って筋細胞には力発揮に伴うストレスを感じとる受容体あるいは受容機構が存在することが示唆されます。

ではでは見ていってみましょう。
インスリン様成長因子T
インスリン様成長因子T(IGF)は分子量約7000のペプチドで、プロインスリンに似た一次構造を持ち、IGF−TおよびIGF−Uの二種類が知られています。この二種類とも種々の増殖細胞を促進させます。
このIGFの細胞増殖促進作用は主として細胞周期のG1期の進行をさせることによります。骨格筋の肥大と分化はIGFと密接な関係があり、成長ホルモンによって分泌促進を受けるだけではなく筋細胞への負荷増大が直接筋細胞から自己分泌あるいは傍分泌を促進します。IGFの分泌量が増加するとDNA量や筋タンパク量増加やサテライト細胞分裂を促すといわれている筋特異的転写調節因子のmyogenin,MyoD,Myf-5などの発現が増加します。
また活性化したサテライト細胞自身もIGFを産生・分泌し、他の増殖因子とは異なり細胞の分化を促進させる作用を持っています。

繊維芽細胞成長因子

繊維芽細胞成長因子(FGF)は繊維芽細胞や内皮細胞の増殖を促進する分子量約16000〜20000のペプチドでファミリーを形成しています。FGF-1,FGF-2はサテライト細胞や筋芽細胞の増殖を促す、また分化を抑制することが知られています。
このFGFは骨格筋損傷時や筋肥大時に筋細胞から自己分泌され細胞間隙に出現し、骨格筋細胞の肥大と増殖に関与していると考えられています。

肝細胞増殖因子

肝細胞増殖因子(hepatocyte growth factor, HGF, scatter factor)は肝細胞の分泌を促進する増殖因子として発見され、その後さまざまな細胞に対しても増殖因子として作用することが確認されました。HGFの受容体c-Metはチロシンキナーゼ型受容体でHGF/c-Met系は臓器障害の修復や再生、発生過程における細胞調節や運動性の調節に関与していると考えられます。


ミオスタチン

筋肥大を制御する因子としてミオスタチン(growth and differentiation factor 8, GDF8)が知られています。ミオスタチンは筋細胞自身から自己分泌されており、ミオスタチンの欠損は筋細胞(筋繊維)数の増大と筋肥大をもたらすことが知られています。
つまり筋芽細胞の分裂を抑制することによって筋細胞の形成と筋肥大を抑えています。
一方で出生後はミオスタチンの分泌量が低下して筋の成長が促進されます。しがたってこの時期のミオスタチンの分泌量の差が筋細胞数を決定するものと考えられています。さらに筋に過負荷をかけることでミオスタチンの分泌量が低下するとも報告されています。

成長因子の細胞内シグナル伝達

1)Ras‐MAPキナーゼ系
IGF、FGF、トランスフォーミング増殖因子β(transforming growth factor-β, TGF-β)、プロスタグランジンは成長因子とも呼ばれる増殖因子であり、局所の細胞で合成されて自身の細胞あるいは傍細胞に作用して細胞の成長、増殖、分化などさまざまな作用を引き起こす物質でその多くはポリペプチドです。
これらの増殖因子を持つ情報を受容するための受容体を増殖因子受容体(成長因子受容体、growth factor receptor)と呼ばれます。この受容体は細胞外に増殖因子を結合する部位と細胞膜を一回貫通する部分および細胞内部位から構成され、細胞内にチロシンキナーゼドメインを、TGF-β受容体ではセリン-スレオニンキナーゼドメインを持ちます。
細胞膜受容体に成長因子が結合すると、受容体に連結あるいは連結していないチロシンキナーゼを活性化することで細胞内に情報が伝達されます。このシグナル伝達経路をチロシン系と呼びます。
成長因子が受容体に結合すると、受容体細胞側のチロシンキナーゼが活性化されて受容体自身がリン酸化されます(自己リン酸化)。続いてリン酸化されたチロシン残基をGrb2(growth factor receptor 2)/Ash(abundant SH)と呼ばれるタンパク質が認識して結合、さらにRasを活性化するGDP-GTP交換因子であるSOS(son of sevenless)が結合します。
そしてチロシンキナーゼのシグナルはGrb2/Ash-SOSの複合体形成を介してRasを活性化し、そのシグナルはセリン-スレオニンキナーゼのひとつであるRaf1を形成膜に引き寄せて活性化します。Raf1はマイトジェン活性化プロテインキナーゼキナーゼ(mitogen-activated protein kinase kinase,MAPKKあるいはMAPK-ERK kinase,MEK)をリン酸化して活性化します(MAPKKのリン酸化酵素、MAPKKKとして機能する)。
MAPPKはMAPキナーゼ(MAPKあるいは細胞外シグナル制御キナーゼ、extaracellular signal regulated kinase,EPK)をリン酸化して活性化します。MARK(ERK)は分子量約40000のタンパクリン酸酵素で活性化に補因子がないという特徴をもちます。
哺乳類にはextracellular signal regulated kinase 1(細胞外シグナル制御キナーゼ1、ERK1)とextracellular signal regurated kinase2(細胞外シグナル制御キナーゼ2,EPK2)の二種類遺伝子ににコードされる二種類のMAPKが存在します。さまざまな真核細胞において、MAPKKK→MAPKK→MAP(ERK)というリン酸化のカスケード(MAPKカスケードMAPキナーゼカスケード)形成して、細胞膜から核への情報伝達において重要な役割を担っています。
MAPKは直接あるいは間接的にc-Fosやc-Mycなどの転写因子をリン酸化することでDNA合成を促進します。筋収縮や神経刺激によってRas-MAPK系が活性化され骨格筋の遺伝子発現、特に遅筋への分化に関与していると考えられています。
2)Pl3K-Akt系
またIGF-Tやインスリンのシグナルを伝達する仕組みとして、フォスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)-Akt系があります。IGF-Tやインスリンが受容体に結合すると受容体の自己リン酸化が生じます。その結果、インスリン受容体基質(insulin receptor substrate, IRS)がリン酸化部位を認識し、PI3Kに結合して活性化します。
PI3Kはフォスファチジルイノシトール三リン酸(PIP3)の産生を介してAktをリン酸化して活性化させます。
Aktはアポトーシスのシグナル伝達に関与し、生存シグナルの伝達において重要な役割を果たしている考えられます。このAktはmammalian target of rapamysin(mTOR)を介してP70s6k/S6K1を制御している。P70s6k/S6K1のリン酸化を阻害すると筋細胞サイズの成長が抑制されることから、筋細胞の増殖や分化に関与していることが示唆されています。
3)カルシニューリン系
増殖因子により直接活性化されるシグナル伝達系ではないですが、筋肥大に関わる細胞内シグナル伝達系にカルシニューリン系があります。カルシニューリン(calcineurin)はCa2+/カルモジュリンにより活動調節を受ける脱リン酸化酵素(フォスファターゼ)です。
例えば、心筋細胞では、細胞内Ca2+濃度の増加によりカルモジュリンにCa2+が結合し、その結果カルシニューリンが活性化される。活性化されたカルシニューリンは筋繊維のタイプの決定に大きな役割を演じていると考えられていましたが、筋繊維タイプの制御だけでなく、筋細胞のサイズの制御にも密接に関係していると考えられています。
ただ否定する研究結果も出ていることから今後の研究結果が待たれるところです。

4)筋細胞による機械ストレスの受容

筋細胞には機械的(力学的)ストレスを感じ取る受容体あるいは受容機構が存在することが示唆されています。
機械的ストレスの受容体の一つとして形質膜を貫通した構造を持つ受容体の総称で、細胞側では細胞内マトリクスと、細胞質ではアクチンやビンキュリンなどの細胞骨格と連結しているインテグリンが知られています。
細胞骨格は他の端が核膜に連結していることから、細胞への機械的ストレスは核へ機械的ストレスとして直接伝達されることになります。さらに細胞外マトリクスは隣接する細胞にストレスを伝達することになります。
また機械的ストレスは直接機械的ストレスとして核膜へ伝達されるだけではなく、他のシグナルに変換されて核へ伝達される経路も知られています。代表的なものは、MAPキナーゼを活性化する経路です。この経路において機械的ストレスを最初に受容するのはインテグリンです。
さらに形質膜の機械的ストレスの負荷により活性化するチャネル(strech activated channel, SA channel)があります。
このチャネルは陽イオンを選択的に通過させるものが多く,Ca2+やNa+がその代表例でK+がそれに続きます。また機械的ストレスにより細胞内のサイクリックAMP(cAMP)やイノシトール三リン酸(IP3)なども上昇することや細胞からATPを放出することでも知られています。
逆に機械的ストレスを受けて不活性化されるチャネル(strech inactivated channel, SI channel)の存在も知られている。
またストレッチに応答する遺伝子や関連遺伝子が骨格筋内に発現することが報告されています。さらにアンギオテンシンUによるアンギオテンシンUタイプ1受容体を介した系も、筋肥大に関与していることが知られています。
さてここで問題となるのは骨格筋細胞にとって機械的ストレスとはどんなものでどの程度のストレスがどこに加わるかです。骨格筋細胞では隣り合った筋細胞がすべて力発揮に関わるとは限らないことから隣接した細胞に引っ張られたり他動的に縮められたりするのだと思われます。また隣接する筋細胞が収縮すると筋細胞の直径が大きくなることが予想されるので圧力もかかるのではないでしょうか。膠質浸透圧も機械的ストレスとなりうることが知られています。
5)筋細胞による化学ストレスの受容
機械的ストレスは筋細胞内にさまざまな化学的変化をもたらすことで、筋細胞の肥大を引き起こしています。、つまり筋細胞の肥大は機械的ストレスではなくとも筋細胞内に肥大を誘発するような変化を引き起こす刺激であればよいことになります。
例えば、血流を阻害してトレーニングすることで低強度でも著しい筋肥大がもたらされます。
阻血により筋細胞への血流供給が抑制されるため、局所的な酸素分圧の低下や代謝産物の蓄積、一酸化窒素(NO)の放出、酸化還元状態が変化するなど、いわゆる非機械的ストレスがもたらされる。これらが筋肥大をもたらすストレスとして受容されていると考えられています。
また最近では筋細胞に化学的変化をもたらすという観点から温熱負荷トレーニングの研究が進められています。これまでに動物を用いたin vivo実験系および、培養骨格筋細胞を用いたin vitro実験系の両系においてあらかじめ筋細胞に対して温熱負荷を与えてからトレーニングした方が筋肥大を促し、逆に負荷除去に伴う筋萎縮も軽減することを確認しています。
温熱負荷トレーニングでは温熱負荷によるストレス(熱ストレス)が筋細胞に受容される。その結果、筋細胞内ではストレスタンパク質(熱ショックタンパク質、heat shock protein, HSP)の発現が増加します。
HSPは分子シャペロンとしての機能を持ち、タンパク質の合成や損傷したタンパク質の修復を促進すると考えられています。またERKやAktなど細胞内シグナル伝達系も温熱負荷により刺激されることを確認しました。
血流を阻害することで筋細胞内に負荷をかける加圧式トレーニングやこの温熱負荷トレーニングなど化学的ストレスを負荷するトレーニング方法は機械的ストレスのように血圧上昇などをもたらすことなく筋肥大、筋力増強、骨吸収の増加、筋力と骨塩量の低下を防ぐなどの意味から高齢者をはじめとしてスポーツ選手のリハビリ、宇宙飛行士などこれからの新しいトレーニング法として期待されています。
6)成長・老化と筋増量
骨格筋は生後発育に伴い機能的に分化・発達します。発育に伴う骨格の成長に応じて骨格筋もまた成長します。
骨格筋の形態的な成長は、
●筋細胞の長さ
●筋細胞の太さ
●筋節数の増加 を伴います。
筋収縮の基本単位であるここの筋節(sarcomere)の長さは変化せずに筋節数の増加により筋細胞は長軸方向に伸張し、横断面方向に拡大(肥大)します。その結果、発育に伴って大きな張力を発揮できるようになります。
老化に伴って萎縮した骨格筋に対しての筋力トレーニングを行った場合でも筋肥大は認められます。90歳でも筋力トレーニングにより骨格筋が肥大することが確認されています。つまり筋力トレーニングという力学的なストレス負荷により細胞内におけるタンパク質合成の活性化および分解系の抑制、さらにサテライト細胞の融合が促進されたと考えられます。またこの肥大は老化に伴って萎縮した速筋繊維に選択的に認められ、、遅筋繊維の肥大率は小さい。一般に高齢者に対する筋力トレーニングは老化現象が進行しているため若齢者に比べて弱いと考えられますが筋肥大に関わる因子は残っているので筋の増量は基本的にいかなる年代でも起こりうると考えられます。
 
 
 
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