STRATEGIC TRAINING SYSTEM

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ボディデザインを行うためのトレーニングにおいて対象筋に負荷がかかる痛みはいいことですが、関節や腱に負担のかかる痛みは好ましいことではありません。怪我は一瞬ですが、治療にはかなりの時間を要してしまいますので。特にかなり重い負荷をかけてトレーニングを行う人たちにとっては一瞬の集中の途切れやその日のコンディションの悪さ、その他本当に小さなミスが大きな怪我を招いてしまう原因となる場合があります。トレーニング中に怪我をしやすい代表的な部位としては腰と肩が挙げられますが、今回は腰痛に的を絞ってそのメカニズムなどについて見ていきましょう。



椎間板損傷のメカニズム:

まずは椎間板のしくみについてみていきましょう。

椎間板は積み木のように重なった脊椎の椎骨と椎骨の間にある柔らかい組織です。この椎間板は繊維輪とよばれる繊維性の組織に何重にも取り囲まれており、その中心には髄核と呼ばれるコロイド状の液体が入っています。繊維輪は椎骨の動きに対して伸びたり、縮んだりし、髄核は柔らかボールベアリングのようなもので椎骨の動きを可能にしています。

腰を痛める際の典型的な動作は主に3つあります。

●体を前傾して腰を曲げたとき
●腰をひねったり、捻ったりした時
●重いものを持ったとき

腰を前傾して腰を曲げたとき、椎体どうしは後ろ(脊髄など神経のある側)が開き、前側は椎体どうしが近づく状態となります。椎体どうしが開くとそれに伴って、その間にある椎間板は後ろが伸びて厚くなり、前が縮みます。前にかがむと椎体や椎間板は後ろ側(背中側)が伸びて、スペースを作るということです。

このときにこの周辺の組織が弱っていたり、椎間板を圧迫する力が強烈だと椎間板の中にある髄核という部分がニョロっと後方に出来たスペースに脱出したり、押し出されたりします。飛び出した髄核は脊髄に走る神経を圧迫し、痛みや神経障害を引き起こします。
これが俗に言われるヘルニアです。(下の図参照)。
National Library of MedicineおよびNational Institute of Healthより



では腰を曲げる動作とは逆に姿勢を反らせていく際には椎間板はどのように動いているのでしょうか?この場合は、先程とは逆で椎間板の前方(お腹側)が伸びて厚くなり、後方(背中側)は縮んで薄くなります。そして髄核も先程とは逆に椎間板の前方のほうに移動します。ところが構造的に私達の体は後方に比べて前方の方が丈夫に出来ており、椎間板も脱出しにくくなっています。また、たとえ、前方に脱出してしまうことがあっても後方のように圧迫する神経もないので、さほど問題にはならないようです。

実際、椎間板ヘルニアの9割以上が後方、または後側方からの脱出であるといわれています。



腰をひねる場合はどうでしょうか?

人間の椎間板はひねりやねじりの動きをするようにはデザインされていません。椎間板の繊維輪の繊維は斜めに走り、それぞれ隣接する繊維はお互い反対側に走って交わっています。そして腰にねじりが加えられると、ねじれの方向の繊維は緊張し、反対に走っている隣の繊維は弛緩します。この繊維の緊張度は構造的に内側(髄核がある側)に行くほど強くなるので、腰のひねり動作を大きくすればするほど、髄核を強く圧迫することになります。

予防:

靭帯や腱は体の中でも血流の供給の乏しい部分ですので回復には時間を要してしまいます。普段からバランスよく栄養を摂取することはモチロンですが、腰椎がその強度を十分に発揮できるようにするには、短期的に強い圧力、そして長期間の低い圧力によって繊維輪や後縦靭帯(脊椎側にある靭帯)をはじめとした靭帯を弱体化させないようにすることです。

ではどのようなところに気を配ればよいかというと、短期的な圧力については、正しく腹圧を高めてトレーニングをする、高重量を扱うときはトレーニングベルトを使用する、腰部を使う種目において腰椎を丸めないようにするなどが挙げられます。

長期的な圧力については、あぐらをかくときにお尻に座布団か何かをはさむようにする、椅子に座るときにも腰が丸まらないようにする、など腰が丸まった状態を維持しないように注意します。強い刺激ではなくとも常に椎間板の後ろ側を伸ばした状態にしておくと、繊維輪や後縦靭帯(脊椎側にある靭帯)をはじめとした靭帯の弱体化を引き起こす原因となります。

本来、椎間板は何トンもの圧力に耐えることが出来る部分です。一生付き合っていくのですから日常の生活、トレーニングにおいて姿勢に気を配り、自分の腰が最大限に機能してくれるよう大切にしてあげましょう。*腰に違和感、痛みなどがある場合は、善は急げ、早いうちに信頼のおけるお医者さんに一度見てもらってください

 
 
 
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