胸郭に付着する筋に課せられる複雑さと同時的要求を考えれば、多くの筋がかかわるという余剰性は非常に適応性に富み、敏感なシステムにとって必要なものである。
横隔膜を除き、換気の筋は体幹、頸部、および上肢の運動のコントロールのような他の機能のために同時に使われるかもしれない。
・安静呼吸の筋(Muscle of quiet inspiration): 横隔膜、斜角筋群(前・中・後斜角筋)、肋間筋(外・内、最内肋間筋)
・強制吸息の筋(Muscle of forced inspiration): 上・下後鋸筋、長・短肋間挙筋、胸鎖乳突筋、広背筋、胸・頸腸肋筋、(脊柱起立筋)、小胸筋、大胸筋、前鋸筋、腰方形筋
・強制呼息の筋(Muscle of forced expiration): 腹筋群(腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋)、胸横筋、肋間筋群
『骨格筋系のキネシオロジー』
■インナーユニットは、横隔膜、腹横筋、骨盤底筋群、多裂筋で構成される。インナーユニットの活動は腹腔内圧を上昇させ、腰椎、骨盤帯の安定に寄与する。
腹腔内圧の上昇は、脊柱の頭尾方向への伸展力を生み出し、体幹を伸展位に保持し、恒常的な体幹姿勢の維持に働く。
■インナーユニットを構成する筋群は、おのおのが拮抗関係にあり、相互に作用しあっている。インナーユニットの機能障害は、ユニットを構成する一つ一つの筋の障害としても捉えられる。
横隔膜は吸気筋であり、腹横筋は呼気筋であることから、インナーユニットの機能障害を呼吸運動から捉えることが可能である。
■横隔膜は吸気で下位胸郭を外上方に拡張させる筋であるため、横隔膜が適切に作用していない状態では、吸気時の下位胸郭の可動性は低下している。
また腹横筋は呼気で下位胸郭を内下方に収縮させる筋であるため、腹横筋が適切に作用していない状態では、呼気時の下位胸郭の可動性は低下している。
●効率の良い呼吸が出来ている人は動作中のブレも少ないですし、正しい骨格配列でトレーニング出来ていることが多いです。即ち、めちゃくちゃ安定しますし、めちゃくちゃ効きます。
どの動作においても*胸腹式呼吸が出来るように。
やりにくい方は、まずは不良姿勢を戻すこと、直接的には腹直筋上部や前鋸筋を緩める、軽めでプルオーバーをやるなどしてから、トレーニングに入ると良いかもしれません。
・胸腔内圧を高める=胸郭の安定=肩関節、肩甲帯の安定
・腹腔内圧を高める=腰部の安定=股関節、骨盤帯の安定
【*胸腹式呼吸とは:胸部および腹部が同じタイミングで吸気時に拡張し、呼気時に縮小する。横隔膜呼吸を用いた呼吸運動の促通にて、呼気終末における胸郭運動を十分なものにできる。
横隔膜の適切な収縮と弛緩を繰り返すことで、zone of apposition(横隔膜の胸郭内面と接している部分)の可動性を確保し、胸郭の復元力を利用した胸腹式呼吸ができる。】
参考『胸郭運動システムの再建法 -呼吸運動再構築理論に基づく評価と治療』柿崎藤泰