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●五十肩(肩関節周囲炎)について

■五十肩は未だに統一された見解が得られていない症候群であるが、1872年にフランスのDuplay が報告した肩関節周囲炎、1934 年にアメリカのCodmanの述べた凍結肩などと同じ医学上の病態を指している。

■信原は、肩関節周囲炎患者4588 名(100%)を病変位置により8種類に分類した。その結果、

@烏口突起炎(229名5%)
A上腕二頭筋長頭腱炎(550名12%)
B肩峰下滑液包炎(92名2%)
C変形性腱板炎(外傷性腱板炎,腱板不全断裂)(1882名41%)
D石灰沈着性腱板炎(183名4%)
E臼蓋上腕靱帯障害(不安定肩関節症)(137名3%)
F疼痛性関節制動症(いわゆる五十肩)(1148名25%)
G肩関節拘縮(367名8%)

であったとして、五十肩は広義では肩関節周囲炎、狭義ではいわゆる五十肩として定義した。

『信原克哉:肩−その機能と臨床.医学書院』

■五十肩の発生機序

・加齢による姿勢の変化

10 代から70 代の健常人 1,801人の脊柱彎曲度を調べた研究によると,加齢により胸椎の彎曲(後彎)が大きくなりその頂点が下方へ移動し、さらにその代償として頚椎の彎曲(前彎)は増強し、腰椎の彎曲(前彎) が減少して脊柱の力学均衡を保持するとしている。

勝田らはその原因を加齢による体幹筋力の変化では体幹を伸展する筋力(背筋力)が大きく減少するためとしている。

・姿勢の変化が上肢に及ぼす影響

重心線は、正常では耳垂、肩峰、大転子、膝関節前部(膝蓋骨後面)、外果の2〜3cm 前部を通る。肩甲上腕関節は肩峰の直下に位置していることから、正常ではほぼ重心線上に上腕骨は位置し、肩甲骨と上腕骨はほぼ平行な位置関係をなす(図2-a)。

しかし加齢により脊柱のアライメントが変化し胸椎の後彎が増大すると、重心線から胸椎後彎頂点までの距離は有意に増大することから、上腕骨は重力に従って前方へ下垂しようとする。

そうなると上腕骨が体幹を通る重心線から離れた状態になってしまうことから(図2-b)、上腕三頭筋および広背筋を用いて上腕骨を胸椎後彎頂点の方向に移動させるとともに上腕二頭筋を用いて上肢を懸垂することで、上腕骨が体幹を通る重心線から離れない状態を保持しようとすることになる(図2-c)。この時、肩甲骨は下方回旋を生じる(図3-a)を生じる。

この現象について市川らは,正常なアライメントの健常成人よりも胸椎が後彎している健常成人の方が肩甲骨の下方回旋角度が有意に大きいことを報告している。

胸椎の後彎の増大により上肢は重心線から離れ(図2-b,図3-a)、この上肢を重心線に引き寄せるために生じる広背筋、上腕三頭筋、上腕二頭筋の過剰な収縮で肩甲骨は内下方に、肩甲上腕関節の関節軸は前上方へ移動するため、上腕二頭筋長頭筋腱の機械的圧迫が増加することになる(図2-c,図3-b)。



・加齢による姿勢の変化と五十肩の関係

三笠によると、五十肩あるいは欧米のPeriarthritis, Frozen shoulder の成因および病態を腱板―肩峰下滑液包に求めた報告は、Duplay、Codman、原、Simmonds、三木と数多く認められる。

しかし変性した腱板がどのようにして腱板―肩峰下滑液包炎になるかについては、はっきり記載されておらず、議論のあるとことであるがら三木は変性して傷害を受けやすくなっている腱板が,軽微な外傷あるいはimpingement により腱板不全断裂,腱内出血、腱壊死を生じそれが五十肩にいたると考えており、

この三木の説を補足すると、これらの病態は断裂の程度がひどいか、その程度がすすめば腱板断裂として治療されるが、大部分は限局性の肩峰下滑液包炎となって、肩の疼痛と運動障害を引き起こし、不動性の関節拘縮、肩峰下滑液包部および関節包に癒着を生じて癒着性肩峰下滑液包炎、癒着性関節包炎となり、五十肩が発症するとともに初期に存在した腱板損傷は治癒過程に入っていくものと思われるとしている。

『日本における東洋医学に基づく五十肩の発生機序とその治療』より

■改善方法

・基本的には姿勢の変化(不良姿勢)、マッスルインバランスを伴う筋力の低下などが主な発生原因だと考えられます。

その不良姿勢を作っている原因は、感染、外傷、腫瘍など原因が明らかなものを除けば、日常の姿勢の癖、職業病(偏った姿勢や体勢)、スポーツなどで繰り返させる機械的ストレスの積み重ねです。ですので、まずは日常生活の姿勢に気をつけて、ストレスを軽減させてあげること。

・もっと言うと、肩が痛いから肩関節ではなく、それに関係している箇所すべて修正していく必要があります。

上肢帯、肩関節、肘関節、手関節、手指は勿論、股関節、膝関節、足関節、足趾まで。って、全身ですね。

修正とは
・過緊張筋、短縮筋の弛緩、リラクゼーション
・関節調整
・弱化筋の活性化、強化
・異常運動パターン修正
・安定化エクササイズ、装具、テーピング
・それを維持する日々のトレーニングなどです。