活性酸素の種類とそのはたらき
活性酸素と単に言っても、これだけの種類がある。
●ラジカル: 三重項酸素、スーパーオキシド、ヒドロキシルラジカル、ヒドロペルオキシルラジカル、アルコキシルラジカル、ペルオキシルラジカル、一酸化窒素、二酸化窒素
●非ラジカル: 過酸化水素、一重項酸素、ペルオキシナイトライト、ヒドロペルオキシド、次亜塩素酸、オゾンなど
そして、上記のうち、体の中で酸素が段階的に還元されていく(酸化して電子をあたえる)際に発生する
・スーパーオキシド
・ヒドロキシルラジカル
・過酸化水素
・一重項酸素
の4つが狭義の活性酸素としてされている。
広義の活性酸素についてはまた別の機会に述べるとして、今回は狭義の活性酸素についてみていこうと思う。
--------------------------------------------------
◆4つの活性酸素
●スーパーオキシド
スーパーオキシドが出来る原因:
エネルギー産生、食細胞活動、薬物代謝、コレステロールの合成、胆汁酸合成、キサンチンの酸化など
エネルギー産生: つまり我々が心臓を動かしたり、呼吸をしたり、歩いたり、ものを考えたり、食べ物を食べるときにスーパーオキシドも一緒に出来るということである。通常は、この過程で発生したスーパーオキシドはSOD(スーパーオキサイド除去酵素)によって、次に述べる過酸化水素と水に分解されるが、激しい運動などで一度に大量発生した場合は対処しきれなくなる。
スーパーオキシド自体にはそれほど強い力はなく、気にするほどのものではないのだが、強力なヒドロキシラジカルを作るのを助ける働きもあるため、あまり野放しにはできない。
食細胞活動: 食細胞とはウイルスや細菌などを食べる白血球の仲間で、これらにはマクロファージや好中球が挙げられる。これらの食細胞は、まずスーパーオキシドを出してウイルスを殺し、食べてしまうわけである。マクロファージは敵を分解し栄養とするが、好中球は自ら出した活性酸素のために死んで「うみ」となる。
その他: 体が薬を処理する際、肝臓でコレステロールを作るのにもスーパオキシドが出る。
*食物からコレステロールを取るほうが体への負担が少ないという言い方も出来る。
●過酸化水素
過酸化水素が作られる原因: ・タバコ、アミン系ホルモンの分解(アミン系ホルモンとはアドレナリン、ノルアドレナリンなど喜怒哀楽、不安にかかわっているホルモンですね)、スーパーオキシドの酵素分解によって、など
スーパーオキシドがSODによって分解されると、過酸化水素と水になる。そして、この過酸化水素がカタラーゼやグルタチオンペルオキシダーゼという酵素によって分解されたら、過酸化水素は無害な「水と酸素」に分解され、無害なものになる。
しかし、事はそう簡単には解決しない。
過酸化水素はスーパーオキシド同様、それほど強い活性力をもっていないのだが、ひとたび二価鉄や一価銅と一緒になると、もっとも活性の強いヒドロキシラジカルに変身してしまうのである。
*この過酸化水素と金属イオンが一緒になることを「フェントン反応」という。
さらにここからもうひとつ。フェントン反応によってできた三価鉄は、スーパーオキシドによって、二価鉄に戻る(ハーバーワイス反応)。そして二価鉄が過酸化水素と一緒になり(フェントン反応)、またヒドロキシラジカルが出来てしまうのである。
それぞれの活性酸素は関連し合っており、活性の弱いものでもあるきっかけを境に大きな負の連鎖を引き起こすことが分かる。
◆ヒドロキシラジカル
ヒドロキシラジカルが作られる原因:
●フェントン反応: 過酸化水素と金属イオンが一緒になることによってヒドロキシラジカルが作られる。
●除草剤・パラコートなどの化学物質: 化学物質が解毒される際、体内でシトクロームP450と呼ばれる解毒酵素がでる。解毒酵素なのだから必要なものなのだが、これらが代謝される際にもヒドロキシラジカルと次の述べる一重項酸素が出てしまう。
●ステロイドホルモンの合成: ステロイドホルモンの分解ホルモンの合成と分解は体の機能を保つために常に行われているのだが、この際にもこのヒドロキシラジカルが出ている。*ホルモン合成の際にもシトクロームP450が関与している。
ドラッグを使うボディビルダーなどが内臓や筋肉を壊すのもホルモン合成、分解の際に代謝産物として出るこの活性酸素が細胞を壊してるのある。
●アミン系ホルモンの分解: 過酸化水素のところでも出てきたアドレナリン、ノルアドレナリンなど喜怒哀楽などにかかわっているホルモン
●過酸化脂質の亀裂: これは一重項酸素のところで述べる。
●放射線被爆、X線照射、放射線療法: X線やガンの放射線療法は規模の小さい原爆のようなものである。放射線は体の隅々まで届き、細胞の中にある水と反応してヒドロキシラジカルと一重項酸素を作り出す。
放射線療法はガン細胞内に活性酸素を作り出すことでガン細胞を退治するという仕組みである。ただしこの攻撃も行いすぎると周りにあるガン細胞より弱い正常な細胞まで傷つけてしまうことになる。
◆一重項酸素
一重項酸素が作られる原因:
●ステロイドホルモンの合成、ステロイドホルモンの分解
●放射線被爆、X線照射
●過酸化脂質の亀裂: 過酸化脂質が分解される際には一重項酸素とヒドロキシラジカルが出る。
●紫外線: 紫外線が当たる際に皮膚で一重項酸素が発生し、コラーゲンやエラスチンなど皮膚の若さを保つタンパク質を破壊する。なお、皮膚のシミなどを改善・予防するための一重項酸素退治にはビタミンCやEではなく、β-カロテンが有効である。
■連鎖的脂質過酸化反応
ヒドロキシラジカルや一重項酸素が細胞膜にある脂質(多価不飽和脂肪)を酸化変性させると、脂質は脂質ラジカルになる。そして脂質ラジカルが作られると、それらは酸素と反応し、脂質ペルオキシラジカルを作り出す。
脂質ペルオキシラジカルは細胞膜にある他の脂質と反応して、脂質ヒドロペルオキシド(過酸化脂質)となり、同時に脂質ペルオキシラジカルと反応した脂質は脂質ラジカルへと変化する。
わかりやすく言うと、活性酸素によって酸化された細胞膜にある脂質は色々な反応を経て過酸化脂質と呼ばれる悪い脂質となり、その悪い脂質がまた悪い脂質を作り出してしまう怖い連鎖反応なのである。この過酸化脂質が増加すると細胞膜の中にある酵素たんぱく質が壊され、正常な体の機能を保てなくなったり、動脈硬化や血栓のできやすい体質を作るなど、様々な病気の原因を作ってしまう。
この反応は細胞膜にあるビタミンEの働きによって終わらせることができるので、ビタミンE、そしてEの働きを助けるCも十分に取っておきたいところだ。
●身近な過酸化脂質の例:
魚の干し物、にぼし、しらす、ポテトチップス、カップラーメン、何回も使いまわすてんぷら油などなど不飽和脂肪酸(魚油、食物油)をたくさん含んだ食品は過酸化脂質になりやすい。ポテトチップス、カップラーメンなどはあまり食べないほうがいいのだが、食べるのであれば開けたらすぐに食べるようにしたい。長時間、そして直射日光の当たるところなどで放置しておくと大量の過酸化脂質が発生してしまうからである。
◆一酸化窒素(NO)
一酸化窒素は、血管の内表面を構成する平らで、薄い細胞の層である血管内皮細胞と呼ばれる部分から産生される。
一酸化窒素には
●血管を広げる作用(血圧を下げる)
●血液が固まるのを抑制する作用(血小板は出血を止めるのに必要だが、あまりにそれが過ぎると血栓症を引き起こす原因にもなる)
●内皮細胞の周りを囲む平滑筋細胞が増えて、血管を窮屈にするのを抑制する
など血管に様々な作用をもたらす物質で、アルギニンと酸素からNOSと呼ばれる酵素を介して作られている。一酸化窒素とスーパーオキシドは同時に発生し、一酸化窒素はスーパーオキシドと反応するのことによって消去される。
その際にペルオキシナイトライトと呼ばれる、より強力な酸化力や毒性を持つ活性酸素が生成される。ちなみに、一酸化窒素とスーパーオキシドの反応速度は、活性酸素除去物質であるSODがスーパーオキシドと反応するよりも3倍早く反応するといわれている。
◆トレーニングとパンプ系サプリメント
アルギニン系のサプリメントの広告には
”体内の一酸化窒素の増大は、トレーニング後の高められた「マッスルポンプ」、持久力や回復時間の改善、ワークアウトキャパシティの改善、性的な活力の増大などの恩恵をもたらす。血管を広げるという役割も持ち、血流量を増やし、筋肉から疲労物質を速やかに除去し、栄養を速やかに運ぶという役割がある。さらに、病原体を捕食するマクロファージを活性化させ、身体のディフェンス力を高める働きもあり、体内の抵抗力を高めるのに役立つ。
”と書かれている。
さきほどご説明したとおりだが、一酸化窒素が沢山出たからそれでめでたしめでたしという話にはならない。他のホルモン物質などと同様、筋発達のメリットの裏には、デメリットがあることを覚えておきたい。
一酸化窒素が出るということは
●同時にスーパーオキシドを発生させ、その反応でより強力なペルオキシナイトライトを発生させる。
●マクロファージの活性化もスーパーオキシドの発生させる。(スーパーオキシドがヒドロキシラジカルを作るのを助ける働きがあるということもスーパーオキシドのところで述べた。)
ということである。
|
|