活性酸素その4
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◆一酸化窒素(NO)
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一酸化窒素は、血管の内表面を構成する平らで、薄い細胞の層である
血管内皮細胞と呼ばれる部分から産生されます。
一酸化窒素には
●血管を広げる作用(血圧を下げる)
●血液が固まるのを抑制する作用(血小板は出血をとめたりするのに
必要だがあまりそれが過ぎると血栓症を引き起こす原因にもなる)
●内皮細胞の周りを囲む平滑筋細胞が増えて血管を窮屈にするのを抑
制する
などなど血管に様々な作用をもたらす物質でアルギニンと酸素からN
OSと呼ばれる酵素を介して作られています。
一酸化窒素とスーパーオキシドは同時に発生し、一酸化窒素はスーパ
ーオキシドと反応するのことによって消去されます。
その際にペルオキシナイトライトと呼ばれる、より強力な酸化力や毒
性を持つ活性酸素が生成されます。
ちなみに、一酸化窒素とスーパーオキシドの反応速度は、活性酸素除
去物質であるSODがスーパーオキシドと反応するよりも3倍早く反
応するといわれています。すなわち、活性酸素の発生は免れることが
できないと。
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◆トレーニングでは
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アルギニン系のサプリメントの広告には
”体内の一酸化窒素の増大は、トレーニング後の高められた「マッス
ルポンプ」、持久力や回復時間の改善、ワークアウトキャパシティの
改善、性的な活力の増大などの恩恵をもたらす。
血管を広げるという役割も持ち、血流量を増やし、筋肉から疲労物質
を速やかに除去し、栄養を速やかに運ぶという役割がある。
さらに、病原体を捕食するマクロファージを活性化させ、身体のディ
フェンス力を高める働きもあり、体内の抵抗力を高めるのに役立ちま
す。”
と書かれています。
さきほどご説明したとおりですが、一酸化窒素がたくさん出たから、
それでめでたしめでたしではありません。他のホルモン物質などと同
様、筋発達のメリットの裏には、デメリットがあることを忘れてはな
りません。
一酸化窒素が出るということは
●同時にスーパーオキシドを発生させ、その反応でより強力なペルオ
キシナイトライトを発生させる。
●マクロファージの活性化もスーパーオキシドの発生させる。(マク
ロファージは活性酸素その2で食細胞と呼ばれる白血球の仲間として
挙げられていましたね。)
ということです。
またスーパーオキシドがヒドロキシラジカルを作るのを助ける働きが
あるということもスーパーオキシドのところで述べました。
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◆抗酸化物質
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ようやく、抗酸化物質のお話ができますね。活性酸素と戦ってくれる
のは今から述べる抗酸化物質と呼ばれるものです。
●スーパーオキシドには
SOD、亜鉛、ビタミンC、バードック
●過酸化水素には
カタラーゼ、グルタチオン、N−アセチルシステイン、セレン、緑茶、
バードック
●ヒドロキシラジカルには
ビタミンE、カロテノイド、メチオニン、バードック
●一重項酸素には
ビタミンE、ビタミンA、ルテイン
●過酸化脂質には
活性酸素に連鎖的な反応があったのと同じように、抗酸化物質にもその
ような作用があり、たとえば、アルファリポ酸はそれ自体の効能以外に
・ビタミンC、ビタミンEを再利用する、
・グルタチオンの生成を促す
・コエンザイムQ10の吸収を助ける
などの作用があります(勿論それらの栄養素が満たされていないといけ
ないのですが)。
他にも強い抗酸化力があるといわれる
オリゴメリックポリアントシアニジン(OPCs)
ピクノジェノール
ビルベリー
クルクミン
フラボノイド
ガーリック
ギンコビロバ
メラトニン
NADH
シリマリン
といったものがあります。
そして今後はピーナッツの皮に含まれるOPCsではありませんが、さら
に安価で抗酸化力の強い物質が発見される可能性があり、今後の新た
な研究が待たれるところです。
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◆とりあえず一旦終了
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もう少し詳しいところまで述べても良かったのですが、あまり同じト
ピックを続けるのも面白くないので、これはこれでまた別の機会に追
ってコラムなどで紹介するとして、次回は一旦話題を変えましょう。
追伸:
適度の運動はSODの活性を促進させます。体を動かすことによって
体内の酵素が働きやすくなった結果であるとも言えますね。
活性酸素を出さないでおこうと家に閉じこもるより、アクティブに生
活したほうがより活性酸素と戦うためのコンディショニングができる
ということです。
活性酸素は今こうしている間も出ているので、無論、活性酸素を過剰
に発生させないケアも必要ですが、如何に抗酸化力を高く保つかを考
えることの方が建設的というものでしょう。