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食事を摂取する際にはどのような脂肪をどれくらいとるかということを忘れてはいけません。脂肪というと我々は血管を詰らせる、脂肪をつけるなど目の敵にしがちですが実際すべてそうではありません。

アスリートにとっては脂肪は第二段階のエネルギー源として重要な役割を果たします。

脂肪(脂質)は炭水化物やたんぱく質と比較して濃縮されたエネルギー源で、炭水化物1g当たり4カロリー、たんぱく質1g当たり4カロリー(しかもたんぱく質は代謝の過程でさらにエネルギーを必要とするので実際より低くなる)に比べて脂質は1gあたり9カロリーあります。

脂肪はとりすぎれば脂肪として蓄えられたり、体内において酸化し過酸化脂質として体内で動脈硬化、高脂血症、高血圧などを引き起こす原因となりますが、脳の発達に関与したり、エネルギー源としてや成長に関与する必須の栄養素です。また脂肪は健康的な皮膚や髪の毛を作るのに必要な脂溶性ビタミンA,D,E,Kや血圧の正常化、体の諸機能の維持に関与する必須脂肪酸も含みます。


それではそれぞれの脂肪について詳しく見て行きましょう。


●飽和脂肪酸:

おもに肉類や乳製品など動物性脂肪に含まれる脂肪、植物性脂肪ではココナッツオイルやパーム油に含まれる。飽和脂肪酸はLDLの増加、乳がん、大腸がん、肺がん、前立腺がん、子宮がんを作り出す原因を高めると言われている。ステロイドの生成に必要であるが大量に摂取することは良いとはいえない。動物実験では飽和脂肪の摂取により神経の樹状突起の長さや数において未発達で、記憶テストで低い成績しか挙げられなかった。


●トランス型脂肪:

マーガリンや植物性ショートニングなどの硬化植物油脂などに含まれる脂肪。反芻動物(牛やラクダなど一度飲み込んだ食物をまた口の中へもどして、かむ動物)の胃の微生物において合成、吸収され、反芻動物の肉や乳脂肪中にも含まれる。また不飽和脂肪酸が水素化(不飽和結合に水素を2個加えて飽和化合物にすること)されることによって作られる。トランス型脂肪は飽和脂肪酸より心臓脈管系に影響を与え、LDLレベルも飽和脂肪酸よりも早く上昇させる。またHDLレベルを低下させることから最も避けたい脂肪である。ファーストフードやファミリーレストランなどのフライものにはトランス型脂肪が含まれている。


●単価不飽和脂肪:

オリーブオイル、キャノーラ油、ピーナッツオイル、アボカドやナッツ類などに含まれ体にもっとも健康的な脂肪であるといわれている。中でもオリーブオイルやなたね油に多く含まれるオレイン酸は体内で酸化されにくい。n−6系の多価不飽和脂肪酸であるリノール酸はLDLレベルを低下させるがHDLレベルも低下させてしまうのに対して、オレイン酸はLDLのみを低下させるという。


●多価不飽和脂肪:

必須脂肪酸を含み、血液中のコレステロールを低下させる脂肪で、大豆やコーン、サフラワー(ベニバナ)、ヒマワリなどに含まれる。通常は血中コレステロールレベルを低下させる良い脂肪と言われているが、不飽和脂肪は性質上酸化しやすい為、取りすぎや抗酸化物質の不足によっては、血中に過酸化脂質(
酸化LDL)の増加、血栓形成、心臓脈管系の疾患の原因となる。また多価不飽和脂肪酸はアレルギー性炎症を促進させてしまう側面もあることから摂取量に注意することと、抗酸化物質を一緒に取る必要がある。

などです。

飽和脂肪やトランス型脂肪は取り過ぎないように注意し、飽和脂肪酸:単価不飽和脂肪酸:多価不飽和脂肪酸の割合が3:4:3、n−6系と多価不飽和脂肪酸(リノール酸やγリノレン酸)とn−3系多価不飽和脂肪酸(DHA、αリノレン酸、EPA)の割合が4:1となるように摂取するとよいでしょう(健康人の場合)。


●中鎖脂肪酸(MCTs、Medium Chain Triglycerides)

通常の脂肪はエネルギーとして利用されるまでに複雑なプロセスを経なければなりません。前述したとおり脂肪は他の栄養素と比較して二倍、1グラム当たり9カロリーを含む濃縮エネルギーですから、仮に脂肪が炭水化物と同じようにすばやく吸収されエネルギーとして利用できればこれほど効率のいいことはありません。

その可能性を持っているのがMCTsです。

MCTsはココナッツオイルやパーム油などから生成される脂肪でグルコースより素早くエネルギーとして利用できると言われています。これは長時間、また高い強度でトレーニングを行う競技選手にとっては最高のエネルギー源といえるでしょう。

MCTsは吸収されると体内でほとんど脂肪として蓄積されず、たんぱく質の消費を防ぎます。実際、MCT分子はアミノ酸を筋細胞に送る運搬屋さんの役割をしておりこれによりタンパクの同化を促進させる役割を持っているといわれています。

しかしながら大量のMCTsの摂取は下痢を引き起こす、肝臓に問題がある人にとっては肝臓に負担をかける可能性があるといわれています。したがって現在MCTsはデメリットの多い飽和脂肪の代替としてサラダのドレッシングやベーキングに使用されることが多いようです。


●コレステロール

アメリカ心臓協会(AHA)はコレステロールは肝臓や腎臓など作られたり、動物食品やその脂肪中に含まれる物質で、体内において血液、脳細胞、肝臓、腎臓、副腎、神経線維の周囲にある脂肪などに含まれ、細胞膜の形成、ビタミンDやステロイドホルモンを作る際に必要となるものであると定義しています。コレステロールは胆嚢において固まると胆石となります。コレステロールが血中に多くなると血管にコレステロールが堆積しアテローム性動脈硬化の原因になるとも言われています。

コレステロールそれ自体は血中において溶解することが出来ません。これらはリポプロテインと呼ばれる運搬体によって肝臓から細胞へ供給される必要があります。

リポプロテインは主に低密度リポプロテイン(LDL)と高密度リポプロテイン(HDL)に分類されます。

低密度リポプロテイン(LDL)はアテローム性動脈硬化のプロセスの中心的な役割をもっており、血中の大半のコレステロールを運搬します。LDLは血管の内壁や動脈に浸透し、フリーラジカルの酸化作用によってコレステロールが細胞壁に蓄積してプラーク(粥腫:粥状の物質)を形成し血管を塞ぎます。

プラークが血管中にに漏れ出すと血栓症の原因となります。冠状動脈に血栓ができると心臓発作、脳に血栓ができると脳梗塞の原因になります。このように体内のLDLレベル(おもに酸化LDL)が上昇すると心臓発作や脳梗塞になるリスクを高めることになります。これがLDLが悪玉コレステロールといわれる由縁です。

高密度リポプロテイン(HDL)は体内において三分の一から四分の一の血中コレステロールを運搬します。HDLはLDLの酸化、コレステロールが血管壁に沈着するのを防ぐ働きをします。またHDLはコレステロールを動脈から肝臓に送り戻す働きや血管壁に形成されたプラークの除去、プラークの形成を遅らせるなどの働きがあるともいわれます。これらの働きからHDLは善玉コレステロールと呼ばれています。

血中コレステロールの量はミリグラム/デシリットル(mg/dL)の単位で表されます。
血中コレステロールを測定する方法としては血中総コレステロール量を測定し、次に総コレステロール量とHDLの比率を測定することによって評価されます。総コレステロールとHDLの理想の比率は5:1から3,5:1といわれています。

トリグリセリドは体内でもっとも多く含まれる脂肪で、このトリグリセリドの量を測ることもコレステロールレベルを計る物差しとなります。食事で摂取された脂肪は体内にてトリグリセリドに変換され、脂肪細胞に貯蔵されます。トリグリセリドレベルの上昇は冠動脈疾患などの疾患と関連があるといわれています。飽和脂肪やトランス型脂肪は血中コレステロール、トリグリセリドを上昇させる主な原因で、これらの脂質を含む食品を摂取すると血中コレステロール、トリグリセリドを著しく上昇させます。


脂質まるわかりシート
定義 固体、半固体、液体などの状態など様々な形態で存在する有機化合物でグリセリド、エスター(アルコールと酸(通常はカルボン酸)の脱水縮合反応で作られる有機化合物)、ステロール、アルコール、炭化水素、ケトン体など脂質の化合物を構成する基となる。
分子構造 炭素、水素、酸素
エネルギー収量 1gにつき9カロリー
分類
  • 遊離脂肪酸: 筋肉や他の細胞においてエネルギーとして利用される
  • トリグリセリド: (グリセロール(糖アルコール)+3遊離脂肪酸  体内の脂肪の95%を占めエネルギーとしてそして貯蓄用のエネルギーとして利用される
  • リン脂質: (1つのリン酸基+2つの脂肪酸) 脂肪を分解する、細胞膜で作用する
  • コレステロール: (4環状構造の結合体) 細胞膜で作用する、ビタミンDやステロイドを生成するのに必要とされる。
脂質の機能
体内において 脂肪(エネルギー)として貯蔵
器官や骨格のクッションの作用
神経線維や細胞への絶縁体として働き、これにより神経インパルスの伝導速度が早くなる(跳躍伝導)
すべての細胞膜の形成に必要
コレステロール分子からビタミンDやステロイドホルモン、胆汁酸が形成される。いくらかの脂肪酸からはプラスタグランジンが生成される。
空腹感を抑える、脂溶性ビタミンの吸収に必要、必須脂肪酸のソースとなる。

脂質は大別して、単純脂質、複合脂質、誘導脂質に分類できる。

■単純脂質
@脂肪(fat)、油脂(oil and fat):化学的にはどちらも同じものをさしているが、食品学では液状のものを油(oil)、固形状のものを油脂(fat)と区別する。飽和脂肪酸含量の多い油脂は融点が高く、体温で溶解しないので腸管からの吸収が極めて低くなる。一方、不飽和脂肪酸含量が多い油脂は栄養的には優れているが、酸化されやすいので保存、安定性の面からは好ましくない。
Aろう(wax):
Bエステル型ステロール:

■複合脂質
@燐脂質:リン酸を含んでいる脂質で、食品成分としてグリセロール型燐脂質は重要。不飽和脂肪酸を多く含むので酸化しやすい。
A糖脂質
Bリポたんぱく質

■誘導脂質
@脂肪酸:飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられる。そのうち不飽和脂肪酸のリノール酸、リノレン酸、アラキドン酸は必須脂肪酸という。動物はリノール酸、リノレン酸を合成できないが、植物が合成したリノレン酸からアラキドン酸、リノレン酸からエンコサペンタエン酸やドコサヘキサエン酸を作ることが可能である。

Aステロール:コレステロールは動物ステロールの代表であり、細胞膜の成分、ホルモンの前駆物質として動物にとって重要。コレステロールに対して植物に含まれるシトレステロール、カンペステロールなどの植物コレステロールは血中コレステロールを低下させるといわれている。
Bアルコール
C炭化水素
Dその他(色素類や脂溶性ビタミンなど)
 
 
 
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