伸張性最大筋力は短縮性収縮よりも強く、等尺性最大筋力(P0)の約1,5倍と推定される。
●エキセントリックが最も強い力を発揮するメカニズム
ミオシン分子がアクチンに結合している状態には、下の図でいうIとIVがある。このうちIVの状態にあるものは、逆向きの変異、微小な伸張を与えると容易に外れることがわかっていて「弱い結合」と呼ばれている。Iの状態での結合はきわめて強く、伸張を与えても容易に外れないため、「強い結合状態」と呼ばれる。
ミオシン分子がアクチンに強く結合した状態にとどまる時間は短く、ATPを結合してからすぐ離れるが、この間に伸張にさらされたミオシン分子は、自らが強制的に変化を受けながら、受動的に極めて大きな力を発揮することになる。この力は強い結合が離れるか、ミオシン分子が壊れるまで増大する。
●エキセントリックな筋活動に伴う筋損傷のメカニズム
現在考えられているものには以下のものが挙げられる。
@細胞内膜系を含む興奮収縮関連のどこかに損傷が生じる。
損傷は運動直後よりも時間が経過すると顕著になるが、これはエキセントリックな運動負荷の機械的刺激によって直接、あるいは間接的に引き起こされる筋細胞内カルシウムイオン濃度の恒常性の破綻が関与していると考えられ、その炎症反応が損傷を進行させるトリガーとなっている。
カルシウムによって活性化されるタンパク分解酵素(カルパインなど)や脂質分解酵素が働き、収縮、構造タンパク質や細胞膜に対して更なる炎症が生じる。筋細胞内のカルシウムイオンの上昇がなければ筋収縮は生じないが、カルシウム濃度が高くなりすぎると筋細胞自体を壊死させるシステムが働いてしまう。
Aエキセントリックな筋活動は少ない運動単位で大きな張力発揮を行うため、相対的に大きな負荷がかかる。
B筋が収縮方向と反対方向にストレッチされる際、筋節長の不均一が生じ、弱い筋節が大きく引き伸ばされ、「はじける(pop)」ためではないかという、ポッピング筋節説も提唱されている。