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●筋発達の鍵を握るタンパク質デコリン

■ノルウェーとドイツの研究チームが、生化学および生物物理学研究コミュニケーション(生化学および生物物理学のすべての側面をカバーする週刊の査読付き科学ジャーナル)に発表した研究によると、

デコリン(decorin)というタンパク質が、ミオスタチンの抑制、フォリスタチンの活性の鍵を握っており、デコリンは筋発達においてミオスタチンやフォリスタチンより根源的な役割を担っている可能性があると言われている。

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■※ミオスタチン(myostatin、GDF-8)とは、骨格内で合成されるタンパク質で、筋発達を制御する。ミオスタチン発現レベルの低下は筋肉量の増加と体脂肪減少を促し、ミオスタチン発現レベルの上昇は、筋肉量の減少/消耗をもたらす。ミオスタチンの抑制が解除されると、筋肉量は2-3倍になると言われている。

※フォリスタチン(Follistatin(FS)、FST)はミオスタチンの働きを阻害するタンパク質。筋肥大のポテンシャルはミオスタチン以上と言われている。

■現在のところ、仮説としては、デコリンが刺激されるとフォリスタチンが作られ、フォリスタチンがミオスタチンの働きを抑制することよって、筋肥大が起こると考えられている。

他にも

・デコリンを沢山生成出来る遺伝子に修正されたマウスでは、怪我や損傷からの筋の回復が早まった。

[Mol Ther. 2007 Sep;15(9):1616-22.]

・ミオスタチンの抑制は、mTORやIGF-1などの細胞増殖系シグナルを活性化するが、動物実験では,この経路を阻害することが寿命の延伸に繋がるとも言われている。
←どれぐらい筋肉が増えると寿命が短くなるかは不明だけど、付きすぎていると負担はかかるかなあと。

沖田孝一:心不全と骨格筋機能障害
Blagosklonny MV:Oncotarget. 2017;8(22): 35492-507

・デコリンはミオスタチンの働きを妨害し、その結果、幹細胞はより早く成熟筋細胞へと成長する。

[J Cell Physiol. 2008 Jun;215(3):856-67.]

・デコリンの研究は試験管内、動物実験で行われてきたが、人間でやった研究がある。トレーニングをしている学生10人に、レッグプレス、レッグカール、ベンチプレス、プルダウン、シーテッドショルダープレス、ケーブルフライ、ローロウ(あと一種目不明)を3セット8レップずつ行ってもらい、血中のデコリン濃度がどのように変化したか調べた。

【その結果、より高重量で行ったものにおいて、血中のデコリン濃度は高くなった。】


・26名の座りがちな生活をおくる、40-65歳の男性に12週間のトレーニングを実施してもらい、前後に脚の筋細胞を採取した。

12週間後、男性らの筋力は増加し、レッグプレスの使用重量が伸び、より多くのデコリンが生成されていた。【結果: 使用重量の増加に伴って、デコリンの合成が増えていた。】



●結論

トレーニングにおいて、オーバーロードの原則は王道。

Biochem Biophys Res Commun. 2014 Jul 25;450(2):1089-94.