カフェインの作用は主として3つ挙げられる。
@細胞内カルシウムの動員作用
A環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼの阻害し→その結果、cAMPのレベルを上昇させ、、カテコールアミンの作用を促進する。
Bアデノシンレセプターのレベルでの拮抗作用=アデノシンは神経の活動電位を抑え、シナプス伝達や神経伝達物質の遊離を阻害するが、これを抑制する。
これらの働きにより、糖質の酸化速度を低下させ、肝臓や筋肉のグリコーゲン分解を節約し、脂肪分解速度を高め、特に持久力を要する競技において効果があると考えられる。肉体運動によるストレスを軽減させるという報告もあるが、これは上記の@〜Bが関係しているといえるであろう。
カフェインは一度吸収されると体中に分布するが、もっとも高濃度になるのが筋肉である。
●炭水化物とカフェイン複合摂取のグリコーゲン再合成における効果
米国生理学会では、炭水化物のみのドリンクと比較して炭水化物&カフェイン入りのドリンクの摂取によってトレーニング後のグリコーゲンの再合成が66%高まると発表にしている。
(Pedersen
DJ, Lessard SJら J Appl Physiol. 2008 Jul;105(1):7-13. Epub 2008 May
8.)
持久系サイクリストを被験者にした実験の結果、以下の点が見られた。
・トレーニング後一時間では炭水化物&カフェイン、炭水化物のみ摂取を比較して筋グリコーゲンの合成において明らかな違いは見られなかった。
・トレーニングの4時間後、炭水化物&カフェイン摂取では炭水化物のみの栄養補給に比べて66%も高いグリコーゲンレベルを示した。
・トレーニング後から4時間、炭水化物&カフェインは血糖&血漿インスリンにおいて高値を示した。
カフェインの摂取により筋中へのグルコースの取り込みが上昇する作用機序に関連している因子として、※AMP活性プロテインキナーゼ(AMPK)や※プロテインキナーゼB(Akt)などのシグナル伝達タンパク質の活性が考えられる。
●プロテインキナーゼB(Akt):
アポトーシスのシグナル伝達に関与し、生存シグナルの伝達において重要な役割を果たしている。このAktはmammalian
taeget of
rapamysin(mTOR)を介して、p70S6k/S6K1を制御している。p70S6k/S6K1のリン酸化を制御すると筋細胞サイズの成長が抑制されることから、筋細胞の増殖や分化に関与していると考えられている。
・カフェインはPI3K/Akt系を活性化させ、パーキンソン病SH-SY5Yモデルにおけるアポトーシス細胞死を防ぐ
(Nakaso
K, Ito S, Nakashima K. Neurosci Lett. 2008 Feb 20;432(2):146-50. Epub 2007 Dec
23.)
●AMP活性プロテインキナーゼ(AMPK、アデノシンモノフォスフェイト活性プロテインキナーゼ):
・齧歯類のヒラメ筋において、カフェインによって引き起こされるCa(2+)放出が、AMP活性プロテインキナーゼ(AMPK)によって筋中へのグルコースの取り込みを活性化させる。
(Jensen
TE, Rose AJら Am J Physiol Endocrinol Metab. 2007 Jul;293(1):E286-92. Epub 2007
Apr
3.)
・カフェイン(1,3,7-トリメチルキサンチン)はインスリン非依存性グルコース輸送、GLUT4の発現、骨格筋における脂肪酸の利用などを含む、グルコースの制御、脂質代謝に関連している。
これらの効果は運動によって誘発されるものと類似しており、骨格筋における5'アデノシンモノフォスフェイト活性プロテインキナーゼ(AMPK)を介在とした代謝性変化である。
この酵素活性はインスリン欠乏状態における3-O-メチル-d-グルコース輸送活性の増加、クレアチンリン酸含有量の減少と関連している。これらはカフェインによるAMPKの活性が、筋肉代謝の制御に関与している事を示唆している。
(Egawa
T, Hamada Tら Metabolism. 2009 Nov;58(11):1609-17. Epub 2009 Jul
15.)
■カフェインによる骨格筋のインスリン作用減退は運動によって軽減される。
@カフェインによってインスリン刺激性のグルコースの取り込み、グリコーゲン合成は減退する。
Aカフェインによってエピネフリン、筋中のcAMP濃度が増加することによって発現する、インスリン受容体チロシンキナーゼ(IRTK)、フォスファチジルイノシノール3キナーゼ(PI
3-kinase)、プロテインキナーゼB(PKB/Akt)、グリコーゲンシンターゼキナーゼ-3α(GSK-3alpha)がグルコースの取り込み、グリコーゲン合成を行う。
B運動はインスリンの感受性を向上させることによって、カフェインの筋中のインスリン作用において不利な影響を減少させる。
(Thong
FS, Derave Wら Diabetes. 2002 Mar;51(3):583-90.)
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