●腰痛について、その1
■腰痛の種類
■脊椎に原因がある腰痛
@腰椎椎間板ヘルニア
A椎間板ヘルニア以外で神経根症状を起こす疾患
(腰部脊柱管狭窄症、腰椎分離症、腰椎すべり症、椎間関節症、神経根嚢腫、椎間板嚢腫)
B椎間板以外で、脊髄症状・馬尾症候群を起こす疾患
(脊柱靱帯骨化症(特に胸椎黄色靱帯骨化症)、骨粗鬆症に伴う圧迫骨折後の遅発麻痺、胸髄くも膜嚢腫、脊髄終糸症候群、脊髄係留症候群)
C腫瘍性
(脊髄膿腫(良性、転移性)、仙骨腫瘍(脊索腫、巨細胞腫)、脊髄・馬尾神経腫瘍)
D炎症性疾患
(脊椎炎(家系性、結核性)、強直性脊椎炎、破壊性脊椎関節炎)
E医原性
(術後不安定性腰痛(偽関節を含む)、Failed
Back Surgery Syndrome、インストルメンテーションに関連した腰痛(handware
failureを含む)、術後腰痛)
Fそのほか下肢症状を伴わない腰痛症。
(ギックリ腰、筋筋膜性腰痛症、姿勢性腰痛症、変形性腰椎症、(坐骨神経痛))
■脊椎以外に原因がある場合
@筋筋膜痛症候群
A内臓疾患ー関連痛
・腎・尿管:腎・尿管結石、腎盂腎炎、腫瘍
・女性器:子宮内膜症、卵巣膿腫、子宮・卵巣腫瘍
・消化器:潰瘍、膵・肝・胆嚢炎症および腫瘍
・後腹膜:後腹膜腫瘍、腸腰筋膿腫
A血管性
(腹部動脈瘤、閉塞性動脈硬化症)
B代謝性疾患
(骨粗鬆症、骨軟化症、Paget病)
C股関節疾患・仙腸関節疾患(炎症または関節症)
D神経疾患(帯状疱疹痛、絞扼性神経障害)
E腫瘍性(多発性骨髄腫、坐骨神経腫)
Fいわゆる心因性疼痛
Gその他
『痛みと鎮痛の基礎知識』http://plaza.umin.ac.jp/~bee.../analgesia/pain-bachache.html
『痛みと鎮痛の基礎知識』小山なつ
●腰痛の種類は、脊椎の歪み以外にも、筋筋膜性、内臓疾患、神経疾患、腫瘍性、血管性、代謝性、関節疾患、心理的要素など、多岐に渡ります。
その中でも、姿勢や筋肉のバランスの崩れから、腰痛を引き起こしているケースは非常に多くみられますので(トレーニングをしている場合は尚更)、いくつかの腰部機能障害のパターンについてみていきましょう。
追伸:
姿勢や筋肉の調整をしても、全く改善が見られない場合は、病気が原因で腰痛になっている可能性もありますので、医療機関を受診したほうが良いかもしれません。
●腰痛について、その2
■パターン@骨盤前傾(反り腰、出っ尻)が腰椎に前弯ストレスをかける場合
この異常姿勢を、ヤンダは下位交差症候群(lower
crossed syndrome)、キーは前方骨盤交差症候群(anterior
pelvic crossed syndrome)と呼んでおり、腰椎、股関節に障害を起こすリスクが高い。
腸腰筋と大臀筋、腹筋群と脊柱起立筋のインバランスが骨盤を過剰に前傾させることにより、腰椎に過剰な前弯を起こす。重心が椎骨の後方に移動することにより、椎間関節に過剰なストレスがかかる。
■問題点
・腸腰筋と脊柱起立筋の過緊張は腰椎の前弯を増強し、骨盤の過剰な前傾を起こす。
・相反抑制の結果、下腹部筋群や大臀筋は弱化する。
・腰椎に伸展ストレスがかかり、椎間関節症、脊椎分離症、すべり症の原因になる。
・脊椎起立筋の持続的な過緊張は、胸腰腱膜や腸骨稜の腱付着部にストレスをかけ、筋筋膜性腰痛の原因になる。
■過緊張筋と弱化筋
・過緊張筋: 胸腰部脊椎起立筋、腸腰筋、梨状筋、大腿直筋、ハムストリングス
・弱化筋:
腹筋群、腰仙部脊椎起立筋、大臀筋
『マッスルインバランスの理学療法』荒木茂
●まず現状を正しく分析、評価すること(もしくは、第三者にしてもらうこと)。
その上で、過緊張筋を緩める→弱化筋を強化する→運動パターン(連動性)を修正していくことが基本原則です。
●腰痛について、その3
■パターンA骨盤後傾が腰椎に後弯ストレスをかける場合
この異常姿勢を、キーは後方骨盤交差症候群(posterior
pelvic crossed syndrome)と呼んでいる。これは前方骨盤交差症候群の逆パターンの異常姿勢である。
体幹の安定性に問題があり、座位や立位において骨盤が後傾し、腰椎の前弯減少がおこる。腰椎の椎間板や、腰椎後面の靭帯および筋にストレスをかける。
■問題点
・腸腰筋や腰仙部脊柱起立筋の弱化により、腰椎の前弯減少と骨盤の後傾を起こす。
・腹筋群は過緊張、もしくは弱化する。また、ハムストリングスは短縮位となり、骨盤前傾に抵抗する。
・骨盤の後傾は腰椎に屈曲ストレスがかかり、椎間板障害の原因になる。
■過緊張筋と弱化筋
・過緊張筋: 胸腰部脊柱起立筋、上部腹筋群、梨状筋、大腿筋膜張筋、ハムストリングス
・弱化筋: 下部腹筋群、腸腰筋、腰仙部脊柱起立筋、大臀筋
『マッスルインバランスの理学療法』荒木茂
●骨盤前傾だと腸腰筋や大腿直筋が、骨盤後傾だとハムと腹直筋上部が過緊張を起こしており、この点では、明らかに筋バランスが異なります。
共通しているのは、胸腰部脊柱起立の過緊張。
微妙な違いは、骨盤後傾のパターンでは腰仙(腰からお尻にかけて)まで過緊張があります。
あと、左は反り腰、右は後傾など左右で互い違いになっている場合、骨盤の回旋が入っている場合もありますので、まずは正しく評価して、対処、対策を考えることが重要です。
●上半身の固さが腰の固さを作ってしまうパターンも多いですので、こちらはまた次回。
●腰痛について、その4
■パターンB頭部前方姿勢と中部胸椎機能不全が腰椎にストレスをかける場合(猫背で頭が前に垂れている状態)
頸部機能障害と同様に、上半身のマッスルインバランスによる異常姿勢が腰椎に対しても影響を及ぼすものであり、ブルガーはこの胸椎の後弯姿勢を中部胸椎機能不全(mid
thoracic dysfunction)と呼んでいる。
通常、頭部前方姿勢を伴うことから、ヤンダの上位交差症候群(upper
crossed syndrome)、キーの肩交差症候群(shoulder
crossed syndrome)と同じ異常姿勢の問題を起こす。
胸椎の過剰な後弯は、肩甲骨、肩関節の可動域を制限し、腰椎に代償運動を起こす。
■問題点
・中部胸椎機能不全は、胸椎4-8番の機能障害であり、デスクワークなどの長時間の座位保持により、胸椎後弯が起こる。一旦、アラインメントが崩れると、歯車が回るように、徐々に重力により、進行する。
・同時に頭部前方姿勢を引き起こす。
・胸椎の後弯は肩甲骨の位置異常を起こし、肩関節の屈曲、外転、外旋を制限する。また肩甲上腕リズムに異常をおこし、肩のインピンジメントの原因になる。
・座位姿勢や静的な立位姿勢では、腰椎の前弯は減少し、脊柱起立筋の活動を抑制する。そして腰椎に屈曲ストレスが生じ、椎間板や腰椎後部の軟部組織損傷などの原因になる。
・横隔膜呼吸を抑制する。
■過緊張筋と弱化筋
・過緊張筋: 後頭下筋群、側頭部、咬筋、斜角筋、胸鎖乳突筋、肩甲挙筋、僧帽筋上部、大胸筋、小胸筋
(※胸、首、頭がガチガチになってます!)
・弱化筋: 僧帽筋中部・下部、大・小菱形筋、脊柱起立筋、横隔膜、腸腰筋
『ヤンダアプローチ―マッスルインバランスに対する評価と治療』小倉秀子監訳
『マッスルインバランスの理学療法』荒木茂
●デスクワークや携帯電話の影響もあるかもしれませんが、このパターンBと骨盤後傾(パターンA)が組み合わさっている人が、めちゃくちゃ多いです。
ヤンダのいうところの、上位交差症候群と下位交差症候群が複合になったものを、【層症候群】と言いますが、この状態を長い期間作ってしまうと、どちらか一つの場合と比べて予後が悪くなります(※筋バランスを修正するのが大変(TдT))。
●トレーニングで例えると、良い姿勢がいわゆる何をやっても効く姿勢だとすれば、このような状態は何をやっても効きにくい、そして怪我もおこしやすい状態とも言えます。
代償動作で、日常生活で筋肉を使って疲労させてしまっているので、筋力を向上させる目的においても、あまり効率の良い姿勢ではありませんし、常に過緊張筋があると本当にすぐ疲れます。
●正しい姿勢を獲得することができれば、何をやっても効かせやすくなり、筋出力に調子のばらつきが少なくなり、疲れにくい状態となります。
それにより、より多くの練習を行うことができ、身体の変化やパフォーマンスの向上スピードも加速します。
腰痛を改善させるための、筋肉のインバランスを戻していく過程で、こんな嬉しい副産物が得られるかもしれませんよ。
●腰痛について、その5
■パターンC股関節機能不全が腰椎にストレスをかける場合
股関節は可動性が必要な関節であるが、可動域制限が起こると腰椎での代償運動の原因になる。
仕事やスポーツなどで、下肢の特定の筋の過剰使用がマッスルインバランスを引き起こし、股関節の可動性を制限する。
【相対的に腰椎より股関節の方が動きの抵抗が大きくなってしまうと、より抵抗の少ない腰椎で代償が起こってしまう。】
■例えば、股関節伸展制限を腰椎の前弯で代償してしまう異常運動パターンでは、腰椎椎間関節にストレスをかける。また脊柱起立筋の過剰使用を起こし、筋、筋膜障害の原因になる。
このように股関節の可動域制限は骨盤を介して腰椎の動きに影響を与えるため、腰部の安定性を崩す。その結果、腰痛として発症する可能性がある。
■問題点
・股関節の可動域制限があると、腰椎で下記のような代償運動が起こる。
股関節屈曲制限の代償として腰椎後弯
股関節伸展制限の代償として腰椎前弯
股関節内旋および外旋制限の代償として腰椎回旋
股関節の内転および外転制限の代償として腰椎の側屈
・股関節に作用する筋群と体幹の筋群にインバランスがあり、腰部に対して、股関節が相対的に動きの抵抗が強い場合、股関節の動きに対して腰部を固定できない。
このため、腰椎の不安定性がおこりストレスがかかる。例えば、座位姿勢、歩行、持ち上げ動作など、日常生活の様々な動作の中で腰椎が過剰に動いてしまう。
・腸腰筋の過緊張と大臀筋の弱化があると、股関節伸展の自動運動が制限される。これを、脊柱起立筋で代償するために脊柱起立筋の過剰使用となり、筋、筋膜性腰痛の原因となる。
■過緊張筋と弱化筋
・過緊張筋: 腸腰筋、梨状筋、内転筋群、大腿筋膜張筋、大腿直筋、ハムストリングス
・弱化筋: 下部腹筋群、腰仙部脊柱起立筋、大臀筋、中臀筋、大腿四頭筋の広筋群
●普通に考えて、あまりに動かない、動かさない部位があると、全身を動かす際に、どこかでその分を補わないと行けないのは当然ですよね。
全く動かしていない部位はありませんか?基本的には身体を整える場合も、鍛える場合も、全身くまなく行ったほうが良いです。
<
●腰痛について、その6
■腰痛のリハビリテーション
1.Williams
の体操(図
1)
6
種類の体操からなり,腰痛症の運動療法における基本である.
@仰臥位で両膝を曲げて少し開く.両手を伸ばし膝の上を滑らすようにして,ゆっくりと上体を起こす.起き上がってしまわないで,肩甲骨が持ち上がったら静止し,その姿勢を保持してもよい.
A
@と同じ体位で,腹筋に力を入れ腰椎部を下に押しつけるようにし,腰椎部より上の背部は平らにベッド上につけたままで殿部の筋を収縮させ上に持ち上げ,ベッドから離す.
B
@と同じ体位で,両膝を曲げたまま胸のところに持ってくる.または,片膝屈曲位で,片膝を両手で抱え,ゆっくりと胸に引き寄せる.
C仰臥位で片脚屈曲位,その位置から膝が伸展位になるように下腿を持ち上げる.足関節は
0
度で,左右交互に繰り返す.
D両肘を伸ばし,片方の膝を屈曲位にし,他方の膝は伸展位のまま体重を前下方へ移すようにする.
E両足を
10
cm
くらい開いた立位から,頸部,胸部,腰部の順に屈曲していき,同時に膝を屈曲していきしゃがむ.そして腰部の筋が十分突っ張るまで身体を前に倒す.このとき,両踵は床につけておく.
2.McKenzie
の体操(図
2)
Williams
の体操が,腰椎の屈曲運動が主体であるのに対し,McKenzie
の体操は患者自身が行う腰椎の伸展運動が主体である.まず,腹臥位でリラックスして安静にする.
次いで,両肘を立てる.この時,頸部,肩部,腰椎部,殿部には力を入れず,リラックスする.そして,両手で支え肘を伸展させ,起き上がる.この時の注意としては,顎を引いて胸を張り,腰椎部に意識を集中し殿部に力を入れない.全身リラックスする.10秒間静止する.
これらの一連の運動を
10
回行う.他動的に腰椎を伸展させることにより,症状が悪化する可能性もあり,運動時に痛みを感じるようであればしない方がよい.
3.Pheasant
の体操(図
3)
Pheasant
の論文の中には,関節mobilization,stretching,および筋力強化が記載されている.
筋力強化のための体操では,
@尻尾たくし上げ運動,これは
Williams
の体操のAとほぼ同様である.
A腹筋強化運動.Williams
の体操の@と似ているが,Pheasant
の体操では,背部を真直ぐにし,20
cm ほど上体を持ち上げるとしている.手は頭を支えるようにし,胸から起き上がるように指導する.
B背筋の筋力強化運動.頸椎や肩は過度に伸展する必要はない.握った手を支点として,脊椎を伸展させる.
C大腿四頭筋訓練.良い姿勢を保持するためには,下肢筋力の強化が重要という理由で,大腿四頭筋訓練を推奨している.
4.Active
Lumbar Stabilization(ALS)(図
4)
感覚―運動刺激(sensory-motor
stimulation)が,姿勢や運動の円滑さを増し,緊張した筋は伸張され,弱い筋は強化されるとした理論による運動である.
Stage
が1〜4まであり,その中で特徴的な
stage
3 の訓練用ボールを使用した運動を紹介する.
@腹部スライド.ボールの上に座り,下部腹筋を緊張させて骨盤を後傾させボールを腰椎で圧迫する.その肢位を保持し,腹斜筋の運動を増加させるため,ボールからの圧力を対角線上の体幹や上肢の動きでカバーする.
Aブリッジング.ボールを下腿部の下に置き,ブリッジを行う.腹部をへこませ両下肢を伸展させていき,ブリッジする.
Bボール上の四つ這いポジション.腰椎は支えられ,過伸展位にはならない.
『腰痛のリハビリテーション 運動療法を中心に』https://www.jstage.jst.go.jp/.../jjr.../43/10/43_10_661/_pdf
●腰痛について、その7
■腰痛のリハビリテーション
5.アメリカ整形外科学会(AAOS)の腰痛のため
の運動療法ガイド(図
5)
AAOS
のホームページには,腰痛のための運動療法ガイド(Low
back pain exercise guide)が表示されている.腰部の筋力強化,早期社会復帰に向けての運動療法であり,1
回10〜30分で
1日1〜3回の運動を勧めている.
整形外科医や理学療法士(PT)が,以下の運動のうち適切なものを選んで処方する.
@仰臥位で足関節の底背屈運動.10
回繰り返す.
A仰臥位で膝屈伸運動.10
回繰り返す.
B腹筋の収縮.仰臥位で膝は屈曲位,手は肋骨の下方に置く.腹筋を収縮させ,5秒間保持する.呼吸はとめない.10
回繰り返す.
C壁スクワット.壁に背を向けて立ち,両足を30cmほど前方へ出す.膝を
45
度まで屈曲して5秒間静止する.また元に戻る.10
回繰り返す.
Dつま先立ち.両足でゆっくりつま先立ちを
10回繰り返す.
E下肢伸展挙上.仰臥位で片方の下肢は伸展位,他方は膝屈曲位.腹筋を緊張させ,伸展位の下肢をゆっくり
20
〜
30
cm 持ち上げる.5秒間静止し元に戻す.10
回繰り返す.
F片膝―胸部ストレッチ.仰臥位で片膝の後方大腿部を持ち,胸まで引き寄せる.20
秒間保持し,その後リラックスする.左右とも
5
回行う.
Gハムストリングストレッチ.仰臥位で片膝の後方大腿部を持ち,ゆっくりハムストリングに緊張を感じるまで膝を伸展させる.20
秒間保持し,その後リラックスする.左右とも
5
回行う.
Hスイスボールを用いた運動.スイスボールに座って,片手をゆっくり上げ下げしたり,片踵をゆっくり上げ下げしたり,右手と左踵を上げ下げしたり,片足を交互に上げ下げし,歩くようにする.
Iボールの上に腹這いになる.ゆっくり交互に手を上げる.交互に足を上げる.膝を曲げて交互に持ち上げる.
6.日本整形外科学会が推奨する運動療法(図
6)
@腹筋体操.仰臥位で,顎を引いたまま上半身をゆっくり起こし,45
度の位置で約
5
秒間静止し,その後リラックスする.10
回を
1
セットとし一日に
2
セット行う.
A背筋体操.腹臥位で,臍より下に枕を挟む.顎を引いて上半身をゆっくり起こし,約
10
cm 上げたところで約
5
秒間静止し,その後リラックスする.10
回を
1
セットとし一日に
2
セット行う.
B腰・背中・腹部のストレッチ.仰臥位で,片膝を両手で抱え,ゆっくりと深呼吸しながら胸の方へ引き寄せる.約10秒間静止し,その後リラックスする.左右で行う.
Cハムストリングのストレッチ.仰臥位で,片方の股関節を
90
度に曲げ,膝の裏を両手で支える.その位置から,膝をゆっくりと伸展させる.もっとも伸びた位置で
10
秒間静止し,その後リラックスする.
『腰痛のリハビリテーション 運動療法を中心に』https://www.jstage.jst.go.jp/.../jjr.../43/10/43_10_661/_pdf
●ガンガントレーニングされている方にとっては、ウォームアップ程度の感覚で行える可能性が高いですが、腰に違和感がある場合はアップ代わりにやってみても良いかもしれません。
できるだけトレーニングに時間を割きたいという方は、アップ代わりに、かなり軽めの重量で、短縮、過緊張している部位のストレッチ種目、弱化している筋の収縮種目を数セット行ってから、メイン種目に入っていくという流れにしてみるのも良い方法かと思います。
●腰痛について、その8
■腰部疼痛性症候群
脊柱は、骨、椎間板、靭帯、筋の制限によって安定している。この安定化システムは、機能的不安定を回避するために、生理学的な領域内の中間位で脊柱を維持する。
脊柱は、脊柱安定性のために必要である多椎間にわたる筋の活動がもたらす力学的作用に影響を受けている。
【筋収縮がない場合、わずか2キロの圧縮荷重下で腰椎が不安定となることが示され、腰椎の明らかな微小外傷は、わずか2度の回旋でも生じてしまう。】
これは脊柱における神経筋制御の重要性を示すものである。
■脊柱安定性の役割における重要な筋群
@傍脊柱筋群
・一つまたはごく少数の分節にわたっている深部の短い筋群(例.回旋筋、横突間筋、多裂筋、棘間筋)
←位置センサーとして姿勢制御に重要
・複数の分節にわたる脊柱起立筋
←腹筋群と拮抗した活動バランスを取る。
A腹筋群
・腹直筋
←体幹屈曲の主動作筋で、起き上がり(sit-up)と体幹起き上がり(curl-up)で活動的。
・腹斜筋
【←体幹屈曲に加え、脊柱回旋と側屈に関係しており、腹部、腰部の安定化に重要。呼気活動を補助。】
・腹横筋
【←必要ではあるが、運動により個々の筋の役割が変化するため、単一の体幹筋は脊柱安定性において優位な役割を果たさない。体幹筋の低負荷の運動プログラムはあまり効果ないかもしれない。】
B腹腔圧
腹腔圧(IAP:
intra-abdominal pressure)の増加が脊柱安定化に関与しているというエビデンスは増えてきている。
横隔膜の収縮は四肢の運動に先だって起こり、腹筋群の形状に活用することで、腹腔圧を増加させる。
【横隔膜の収縮は、腹横筋、そしてそれぞれの呼吸相の賦活と同時に起こる。加えて骨盤底筋群は、腹腔圧を制御し腰椎骨盤帯領域を強化するのに役立つ。】
さらに腹腔圧は呼吸中に調整されるため、骨盤底の活動の変化も伴いやすい。
腰椎骨盤帯筋系の反射的な活性化は、脊柱の機能と動的安定性に重要な役割を果たす。
C胸腰筋膜
胸腰筋膜は、コラーゲン線維が整然とした格子状をなした非常に強靭な組織である。
背部深部筋と体幹を覆う。
広背筋が腹部周辺で輪の一部を形成し、胸腰筋膜と絡み合っているのと同じように、腹横筋と内腹斜筋は後方筋膜と交差している。
これらの筋の収縮は、胸腰筋膜を経て腰椎を強固にし、安定化に寄与する。
『ヤンダアプローチ―マッスルインバランスに対する評価と治療』小倉秀子監訳
●順番的には、
@色々な姿勢の中で正しい呼吸ができること→
A腹筋や背筋の運動→
Bスクワット、ランジ、デッドリフトなどフリーウェイトの複合関節種目において、ある程度負荷をかけた状態で、腹部、腰部、横隔膜(腹腔圧、胸腔圧)をバランスよく使えること、
を心がけたいです。
腹筋をやらなくても、腹筋に刺激がしっかり入っている人は、それだけ全身がうまく使えてると言っても良いかもしれません。
●腰痛について、その9
■腰部機能障害の姿勢分析における重要な観察
■後方(後ろから見て)
・腸骨稜の偏位(脚長差または仙腸関節回旋)
・平坦な臀筋(臀部の弱化に伴う同側仙腸関節機能障害)
・非対称または肥大した傍脊柱筋群(脊柱不安定性(特に腹筋)の障害)
・骨盤の外側偏位(骨盤偏位側の中臀筋の弱化)
■側方(横から見て)
・前弯増強(硬い股関節または臀筋弱化)
・肩甲上腕関節内旋位(大胸筋の緊張または中部および下部の肩甲骨安定性の弱化)
・顎と頸部の角度(頸部表層屈筋群の肥大、頸部深部屈筋群の弱化または抑制)
■前方(前から見て)
・胸鎖乳突筋肥大(胸鎖乳突筋の緊張、呼吸補助筋による呼吸)
・奥深い腹部のしわ(腹筋の協調性障害)
・胸骨下角の拡大(呼吸と深部脊柱安定化システムの障害)
●身体って本当に嘘をつきませんから、自分がどのような動き、行動をしてきたかは、すべてそのまま身体に出ます。
身体の前方は自分でも観察することが出来ますが、側方、後方となると中々自分で観察することが難しくなりますので、一度専門の方(コンディショニング系のトレーナーや治療家)に身体の状態をみてもらうことをオススメします。
自分の身体の現状を知ることができれば、腰痛防止の対策も立てやすいですし、改善方法、強化方法など、すべてが見えてくるからです。
姿勢の分析、筋の分析(対称性、外形、筋緊張)の重要性は、腰以外の部位の機能障害を改善させる上でも同様のことが言えます。
●腰痛について、その10
■まとめ
・腰痛の種類は、脊椎の歪み以外に、筋筋膜性、内臓疾患、神経疾患、腫瘍性、血管性、代謝性、関節疾患、心理的要素など、多岐に渡る。
姿勢や筋肉の調整をしても、全く改善が見られない場合は、病気が原因で腰痛になっている可能性もあるので、医療機関を受診したほうが良い。
・骨盤前傾、後傾、頭部前方&中部胸椎機能不全、股関節機能不全など姿勢タイプによって過緊張&弱化する筋肉の部位は変わるので、自分の姿勢のタイプを評価し、アプローチしていく。
・これは他の部位にも言えるが、日常生活で姿勢や身体の使い方に気をつけること。そのためにはまずは正しい姿勢、身体のバランスの中心を感じられるようになることが重要。
・色々な姿勢の中で正しい呼吸ができるようになること。
・腹筋や背筋の運動。
・スクワット、ランジ、デッドリフトなどフリーウェイトの複合関節種目において、ある程度負荷をかけた状態で、腹部、腰部、横隔膜(腹腔圧、胸腔圧)をバランスよく使えるようになること。
●日常生活やスポーツなどによって、身体の歪みは必ず生じます。それに耐久できるだけの筋バランス、筋力を普段から身につけておくこと(※正しいフォームでウエイトトレーニングをするとかなり効果的です)。
歪みが発生したら、その原因をまた評価し、それらを改善、強化するためのアプローチにすぐ取り掛かること。
普段何もケアしないことで、起こるべくして起こった腰痛に対して、対症療法で一時的に痛みを取っても、再発防止にはなりません。
トレーニングと同じですが、普段からコツコツケアをしていたら、よほどの事がない限り、いきなり大怪我してしまうリスクは回避できるかと思います。